2013年8月の塾歴(じゅくごよみ)

塾業界に関連するイベントをご紹介いたします。

8月7日(水)~ 8月8日(木) 10:00-17:00
東京大学 主催
「高校生のための東京大学オープンキャンパス2013」
会場:東京大学 本郷地区キャンパス
お問い合わせ:Tel.03-3815-8345(オープンキャンパス事務局)
8月7日(水)~8月8日(木) 9:00-17:00
京都大学 主催
「京都大学オープンキャンパス2013」
会場:京都大学 吉田キャンパス各構内および桂キャンパス(工学部の一部の企画)
お問い合わせ:Tel.075-753-2523(オープンキャンパス担当)
8月8日(木)~8月11日(日)
アップ教育企画 主催
「レゴスクール サマーキャンプ」
お問い合わせ:アップ教育企画運営のレゴスクール各教室まで
8月10日(土)~8月11日(日) 10:00-17:00
大阪私立中学校高等学校連合会 主催
「大阪私立学校展」
会場:天満橋OMMビル
お問い合わせ:Tel.06-6352-4761(事務局)
8月17日(土)~8月18日(日) 10:00-16:00
東京私立中学高等学校協会、東京私立初等学校協会、東京都私学財団 主催
「東京都私立学校展、進学相談会」
会場:東京国際フォーラム 展示ホール
詳細:東京私学ドットコム http://www.tokyoshigaku.com/
8月17日(土)~8月18日(日) 10:00-17:00
福岡県私学協会 主催
「第21回 福岡県私立小・中・高校展」
会場:エルガーラ(福岡会場)、小倉井筒屋新館(北九州会場)
お問い合わせ:Tel.092-713-7281(事務局)
8月21日(水) 10:00-16:00
東進ハイスクール 主催
「2013年大学学部研究会」
会場:東京国際フォーラム
詳細:東進ハイスクールウェブサイト http://www.toshin.com/
8月25日(日) 13:00-17:00
成基学園 主催
「2013年度入試のための進学フェア」
会場:みやこめっせ
お問い合わせ:Tel.0120-578380(成基カスタマーセンター)

東京・渋谷で個別指導塾向け無料セミナー開催

個別指導塾経営コンサルタントのリアル・パートナーズは、来る9月15日(日)、東京・渋谷ティーズフラッグにて「外部集客×内部充実=生徒数アップ」と題した個別指導塾向けの無料セミナーを開催する。

同社が発行するメルマガが創刊100号を迎えることを記念し、参加料金は無料となっている(通常、同社が主催するセミナーの参加料金は2万円~)。この日は、午前・午後の二部構成となっていて、午前の第一部は過去に同社のセミナーに参加したことがないビギナー向け、午後の第二部は過去のセミナー参加者向けの内容になる。1986

リアル・パートナーズ代表の安多秀司氏と小倉政彦氏は、ともに地域ナンバーワン個別指導塾の現役の経営者でもある。それに伴う現場に即した、机上論ではないコンサルティングが人気を博している。安多氏が教室運営、小倉氏が集客を得意分野としており、その両輪による塾経営のサポートが特長。新規開業者を含め、生徒募集に悩む塾の支援に確かな実績を誇っている。

今回の無料セミナーも両氏の強みを活かして、塾経営を「内的要素」「外的要素」の双方からレクチャーする内容となっており、第一部では、安多氏が「中3→高1への継続率UP」「秋以降の教室運営」、小倉氏が「チラシ・HPの基本」などについて。第二部では「口コミだけで入塾キャンセル待ちが発生する内部戦略(安多氏)」、「チラシだけに頼らない塾のマーケティング戦略(小倉氏)」などをラインナップ。

安多氏は「今回のセミナーは感謝の還元が趣旨であり、無料だからと言って出し惜しみするつもりはない。お伝えするのは、現役塾経営者である私たちが自らの経験に基づいて構築し、現在も実際に行っているものばかり。実用性の高い具体論を知りたい方はぜひ参加して欲しい」と語る。

定員は、第一部・第二部とも各12名。同セミナーの詳細は、公式サイトへ

 

高校無償化:所得制限、900万円で調整 与党

自民、公明両党は8月5日、民主党政権で導入された高校授業料無償化について、新たに所得制限を設ける方向で一致した。親の世帯の年収900万円前後で調整し、浮いた財源を、低所得世帯の生徒向けに創設する給付型の奨学金制度などに充てる方針。早ければ秋の臨時国会に関連法案を提出する。自民党は昨年の衆院選公約で「真に公助が必要な人々の制度に転換する」と所得制限の導入を掲げ700万円前後を主張。これに対し、公明党は家計支援重視で1200万円程度を主張。財源の活用策や導入時期をめぐる議論があり、両党は再協議する。

学童保育、最多2.1万カ所

全国学童保育連絡協議会のまとめで8月5日、学童保育の施設数が今年5月1日時点で全国2万1635カ所に上り、過去最多を更新したことが分かった。利用児童数も88万8753人で過去最多を記録した。調査はアンケート用紙を送る方法で、全市区町村から回答を得た。童保育の施設は昨年同期と比べて789カ所増加。利用児童は4万1786人増えた。待機児童は昨年同期比1008人増の6944人。2割程度の自治体は待機児童の数を把握しておらず、同協議会は「潜在的なニーズはもっと多い」としている。

ホンダ新型「NSX」デモ走行を世界初公開

ホンダの米現地法人アメリカン・ホンダモーターは8月4日、スポーツカーの新型「NSX」試作車によるデモ走行を、米オハイオ州で開催されたインディカーシリーズ第14戦で公開した。新型NSXは、直噴V型6気筒エンジンを車両中心に配置し、新型ハイブリッドシステムを搭載。エンジンと高効率モーターを内蔵したデュアル・クラッチ・トランスミッションと、左右の前輪を独立した2つのモーターで駆動する電動式の四輪駆動システムで、高い走行性能と燃費を両立させた。2015年から北米を皮切りに世界で販売する予定という。

学研HD、学習塾の全教研を30億円で買収へ

教育・出版大手の学研ホールディングス(HD、東京、宮原博昭社長)は13日、福岡県内を中心に北部九州などで小中高校生向けの学習塾を展開する全教研(福岡市、中垣一明社長)を買収すると発表した。契約締結は14日で、学研HDの子会社の学研塾ホールディングス(東京)が経営陣などが持つ株式を30億円で買い取り、全株式を取得する。

全教研の中垣一明社長(『月刊私塾界』8月号より)

全教研の中垣一明社長(『月刊私塾界』8月号より)

買収後も全教研の社名は変わらず、中垣一明社長をはじめとする経営陣は続投する。全教研は、1977年に設立され、福岡証券取引所に上場していたが、2009年に経営陣による自社買収(MBO)を実施し上場廃止していた。2013年2月期の売上高は45億1300万円で、純利益は1億7300万円。

都民銀と八千代銀が統合へ

東京都民銀行(港区)と八千代銀行(新宿区)が経営統合に向けて協議を進めていることが5日、明らかになった。来秋にも共同持ち株会社を設立し、両行が傘下に入る案を軸に検討している。実現すれば、預金量は計約4兆4000億円となり、関東圏では年内の再上場を目指す足利銀行(4兆7821億円)に次ぐ6位規模の有力地銀が誕生する。両行の店舗数は首都圏を中心に合計で約160。統合で業容を拡大すると同時に効率化を進め、収益力強化を目指す。

論文・研究の不正防止策検討、作業部会設置へ

文部科学省は8月2日、論文の捏造や研究費の不正使用の多発に対し不正防止対策を検討する作業部会の設置を決めた。下村博文文部科学相が閣議後会見で秋をめどに対策をまとめると発表した。文科省はこれまでも、研究不正の対応や研究費管理の指針を作り、研究機関に対する告発窓口の設置促進、調査、罰則強化、研究倫理教材の作製支援などをしてきた。それでも京都府立医大や東京慈恵会医大、東京大などで論文や研究費の不正問題が相次ぎ、科学研究に対する信頼がゆらいでいる。今後、倫理教育の強化などの予防策を検討する。

TOP LEADER Interview|株式会社ナガセ 永瀬昭幸社長

去る5月16日、東進衛星予備校全国大会の「第20回記念大会」にて新たな決意を表明された、永瀬昭幸社長に、東進衛星予備校をはじめ、東進ハイスクール、四谷大塚、東進こども英語塾、イトマンスイミングスクールなど、さまざまな角度から教育に専念してきた観点から、さらに深く話を伺った。

独立自尊の社会・世界に貢献する人財を育成する
株式会社ナガセ 永瀬 昭幸社長

自ら求め自ら考え 自ら判断・実行する 生徒を育てる

株式会社ナガセ・永瀬昭幸社長

―――ナガセグループ全体の教育目標=企業目標である「独立自尊の社会・世界に貢献する人財を育成する」 具体的にはどんな取り組みをされているのですか。

「わたしたちは、『独立自尊の社会・世界に貢献する人財を育成する』ことを教育目標としておりますが、独立自尊とは、自らの人生について信念を持ち、プライドにかけて決めたことを完遂することであると考えています。具体的な生徒指導では、まず生徒自身が、何をどのように勉強するのか自分の頭で考え、計画を立てる。もちろん、我々は生徒が考えたり計画するための材料はたっぷり与えますし、いつまでにそれをやるのか締切を決めて、ちゃんとやるように励ます。生徒の考えや計画が正しかったかどうかは、模擬試験の成績などから、生徒が自分で考えて、問題があれば計画を変更します。そうして自分の責任で、自ら求めるという職場をつくることで、独立自尊の精神が育まれるわけです」

―――”心の教育”に取り組まれて5年目になります。

「これまで長く教育に携わってきてわかってきたのですが、「受験に王道はない」という言葉の通り、志望校に合格しようと思ったら、徹底的に努力をするしかない。だからといって、誰かに強制されて勉強をしても学習効果は低く、目の前の受験に勝てたとしても将来につながりません。一方、自ら求め、自ら考えて勉強すれば取り組みの成果は飛躍的に高まります。自ら求め、自ら考え、自ら判断・実行する生徒を育てるためには、生徒の心をしっかりと鍛えていく必要があると考え、そういう方向でやってきたことが、ここまで成長できた要因だろうと考えています。

先日、雑誌で東大合格者のインタビュー記事を見ましたが、東進出身の生徒は皆、しっかりと未来を見据えて、自らの志や夢を語っていました。あれには私も嬉しくなりました。夢は、努力をするための原動力だと思います。しっかりとした心が備わっていれば努力を継続できるし、私たちの取り組んでいる”心の教育”は、感度のいい子ほど影響を受けていきますから、まずは感度の良い生徒を自ら求める状態に変えていく。そのうえでだんだん”心の教育”が多くの生徒に浸透していけばいいなと思っています」

応用力を身に付け、予習と復習のバランスのとれた学習指導を

四谷大塚の新「予習シリーズ」

四谷大塚の新「予習シリーズ」

―――四谷大塚の予習シリーズが今年改訂されました。大きなポイントとしてどんなことがあげられるでしょう。

「生徒に大きな夢、高い志を持たせ、自ら求める心、自ら考えて勉強に取り組む習慣を身につけさせるには、高校3年間だけでは不十分で、小学校の頃から取り組む必要があると考えています。たとえば、私は、人に教わったことだけを復習して、解答のパターンを丸暗記するだけでは、将来自らの頭で考えて社会で活躍できる人間にはならないだろうと思う。それだけではなく、自分で一生懸命予習して、自分の頭で考えて問題を解いていくという訓練も大切だと思います。もちろん、成績がよくなかった単元の欠点を是正する必要もありますから、予習至上主義でも、復習至上主義でもよくないと考えています。今回の予習シリーズ改訂は、どちらもバランスよくやって、しっかりわかった上で次の単元に入っていくといったカルチャーに切り替えようという試みなんですね。

まず、その5年生の3月までに受験の課程を全部修了させる。そして、6年生の1年間をかけて、それに対する応用力をつけながら志望校対策をしっかりする。基本的には”スモールステップ・パーフェクトマスター”の考え方です。自分にぴったりのレベルからステップアップし、習ったことを確実にマスターする。けれども、勉強というのは面白いもので、はじめて学んだときは多少わからなくても、先の段階へ行って振り返ってみると、こういうことだったのかと理解することもけっこう多い。広い立場からものを見てみると、かえってわかりやすいこともありますから、基礎基本を徹底的に身につけながらも、応用力の高いことも一緒にやっていきます。同時に、毎週行う〝週テスト〞で、授業で学んだ内容を復習する。この取り組みは、どんどん底力が付いてくると思いますよ」

日本の将来のために、世界で活躍できる人財を育成

―――文科省を中心に教育再生実行会議が立ち上がり、入試制度などでの大学改革も進んでいくかと思います。そうなると教育の仕方も大きく変わっていくのではないでしょうか。

「まず大切なことは、”このような人間を育てるんだ”という大きなビジョンを描くことだと思います。そのうえで制度の変化に対しては、積極的に手を打っていきたいと思います。こども英語塾ではすでに、小学生の段階から他の教科も 全部英語で教えることもしています。英語は、一つの科目として学ぶだけではなく、数学や理科や社会も英語で学ぶことで、本当に使える英語になっていくと思っています。

東進USAオンライン講座にしても、時差による弊害を取り払った仕組みを作り上げましたので、全国の塾のみなさんにも提供させていただきたいと思っています。「何を使って英会話を勉強するか」と考えるとき、金額が安いかどうかで決めるのは、私は邪道だと思う んです。言葉というのはカルチャーですから、アメリカのカルチャーを学びたいのであれば、アメリカのネイティブと話をすべき。旅 行で話が通じるということだけで満足されるのであればそれでけっこうですが、ビジネスでは一切通用しませんから。ビジネスで、億 単位のお金を動かすような仕事をするつもりなら、アメリカのカルチャーと密接に関わらないと無理だと思います。

日本の将来を考えると、世界で活躍できるような人財を育成していかないと、もうこの国は立ち行かない。だから、そうした教育を、公立学校がやるのか、大学がやるのか、民間教育者がやるのか、などという議論は不要だと思います。どんな人財を育てていくのか、しっかりとした目標を掲げ、それを教育に携わる全ての人間だけでなく、実業界も巻き込んで、日本全体で取り組んでいく。その中でしっかりとした人財を育成できるところが、日本国民が頼りとする教育機関になっていくのだと思います。私は、全国の塾の先生方と協力しながら、何としてもこの大仕事をやり遂げたいと思っています」

すべて無料で受けられる小・中・高の全国統一テスト

すべて無料で受けられる小・中・高の全国統一テスト

日本の将来を担う、リーダーを育成する

―――6月2日に、小学1年生から6年生の全学年対象の全国統一小学生テストがありましたが、こちらの反応はいかがでしたか。

「全国統一小学生テストは、受験者数は毎回10万人を突破しています。また、今年から全国統一中学生テストもスタートし、今回は11 月4日(月)に実施します。これで、全国統一高校生テストと合わせて、小中高の全国統一テストが揃うことになります。

全国のたくさんの塾の先生方に趣旨に賛同いただき参加をしていただいており ます。全国の才能ある生徒 諸君を発掘し、年月をかけて育てていく。日本の将来を担う人財を発掘・育成することにつながる取り組みであると確信していますので、これからも一生懸命取り組んでいきます」

―――今後の目標はなんでしょう。

「今年度、東大現役合格者は600名になり、現役合格者の3・3人に1人が東進生です。難関大学を中心に、東進生の占めるシェアが高まってきました。将来の日本を引っぱっていくような、たくさんのリーダー候補生をお預かりしているのですから、日本の未来を明るいものにするために、教育に携わる人間の役割、責任は極めて大きいと考えています。

東進ハイスクール、東大現役合格600名達成のポスター

東大現役合格600名達成のポスター

国力とは、国民一人ひとりの人間力の総和です。私は、生徒の人間力を高めることで、日本の将来を拓いていくことが、教育機関としての使命であると考えています。

私どもだけではできないことであっても、日本全国の先生方と力を合わせれば、日本全体を巻き込んだ教育運動を起こすことができると確信しています。全国のたくさんの先生方に支えられ、毎年開催している東進衛星予備校全国大会も今年で20回の節目を迎えることができました。これからも、先生方にご指導頂きながら、お預かりした生徒全員を伸ばすシステムを作りあげられるよう一生懸命頑張ってまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます」

『月刊私塾界』2013年8月号掲載

疾風の如く|進学塾ブレスト(佐賀県)代表取締役社長 犬走智英さん

ブレスト犬走智英さん
剣道があった。音楽があった。
歴史があった。
親友が、悪友が、愛する人がいた。
それらすべてが、
彼の信念を創り上げている。
栄光も挫折も経験し、
夢と希望を乗せたバイクが西へと走る。

 

 

答えはシンプル、「勉強はスポーツだ!」

「オレは建築家になる。お前はどうするんだ」

「さよなら、東京」―。6年前の1月、犬走智英(当時24)は恋人を背中に、箱根峠をひたすら西へ、西へ。二人を乗せたバイクが目指すは、犬走の故郷・佐賀だ。寒風の中、体は冷え切っていたが、心は夢と希望で熱く燃えたぎっていた。

さらに遡ること、幼少期。犬走は、あるガキ大将と仲良くなった。偶然にも、二人とも剣道少年。「コイツには負けねー!」とライバル心に燃えて練習を重ね、佐賀県武雄市の大会では優勝も飾った。

人としての礼儀。競い合い、高め合う喜び。剣道は、塾人・犬走としての原点を叩きこんでくれた存在だ。

中学では定期テスト学年1位だったが、転機が訪れたのは高校時代。地元の進学校へ進んでからだ。「井の中の蛙」という言葉の意味を思い知らされ、あっという間にドロップアウト。髪を染め、悪友に借りたバイクを乗り回すようになる。

ただ、素行は荒れていたが、同時に「なぜオレはこうなった」「教育って何なんだ」という想いも常に抱いていた。仲間とたむろしては、将来を語り合う。「オレは建築士を目指すぞ。犬走、お前の夢は何だ?」とガキ大将。「そうだな、オレは……教育の道に進みたい」。

 

抑鬱状態。どん底を味わう

洗練された外観が目を惹く教室。手がけたのは、旧来の親友だ

洗練された外観が目を惹く教室。手がけたのは、旧来の親友だ

田舎町の不良少年たちにとって、東京は憧れの街だ。そこに行けば、何でも叶う気がするビッグタウン。犬走にとってもそうだった。なんとか合格を勝ち取るための効率的なトレーニングをし明治大学へ進むが、「デカいことをやりたい」という気持ちと、反逆精神は持ち続けていた。自分の感情を昇華するため、社会の矛盾を痛烈に批判するHip-Hopの音楽制作にハマり、Lyric(歌詞)をノートに書き綴った。恋人と出会ったのもこの頃だ。そして、当時の音楽仲間と制作した楽曲は、スノーボードDVDのBGMとして採用され、コンピレーションアルバムが全国のスポーツショップでも販売された。

その後は大手進学塾に入社し、そこで頭角を現す。社長の信任も厚く、起業家マインドの薫陶も受けた。やりがいを感じ、昼夜を問わず働いていたが、好事魔多し。自らを追い込みすぎ、心と体が蝕まれていく。「オレがやらなきゃ」という義務感だけが自分を動かしていたのだ。胃痛だと思って診察を受けた結果は「抑鬱状態」、即ドクターストップ。休職に追い込まれ、虚無な日々が過ぎて行った。

さよなら、東京

ある日、見かねた恋人は「カフェでも行ってノンビリしたら?」と勧めてくれた。ココアをすすりながら「教育とは」という想いが頭をかすめていく。「オレをはじめ、田舎で育った人の多くは『競争』を楽しむことを知らない。そんな育ち方をして、厳しい実社会に放り込まれたらどうなる。オレみたいに壊れちまうんじゃないのか」。「練習して、できるようになる、ライバルに勝てる、そうすれば嬉しい。実にシンプルじゃないか。勉強も仕事もスポーツと一緒だ」。「自分の塾を創りたい。そうだな、名前は何にしよう?」……かつて綴ったLyricノートをパラパラめくり、見つけた言葉がこれだ。『BRAIN STORMING』―「いいな、これ。『ブレスト』か。批判せず、アイデアを出し合う塾。『自分がやらねば』に固執していたオレにピッタリだ。バランスを大切にし、もっと頭を柔らかく、いろんな人にアドバイスをもらいながら、愛される塾。スポーツのように勉強に取り組む塾。競争を楽しめて、実社会を強く生きる子どもを育てる塾。オレはそれを創りたい」。

社長に最後の挨拶をすると、力強い握手で送り出してくれた。恋人に佐賀へ帰る決意を伝えると、涙を浮かべこう言った。「私の夢は、あなたの夢を支えること」。もう迷うことは何もない。二人はバイクにまたがり、佐賀へとエンジンをうならせる。

ブレストの生徒タチ

礼儀と競争の楽しさを教え込む。子どもたちも塾が大好きで仕方ないと言う

もちろん、犬走は当時想像できなかったはずだ。やがてその塾は、人口わずか9000人の小さな町で、100名ほどの生徒が通うナンバーワン塾となることも。かつて夢を語り合ったガキ大将は一級建築士となり、新しい教室を設計してくれることも。恋人は妻となり、愛する子が生まれることも。「さよなら、東京オレはオマエに負けねェーからなー!」―。バイクはいま、関門海峡を越えた。光が見えた気がした。(敬称略)

 

プロフィール

犬走智英 TOMOHIDE INUBASHIRI

ブレスト犬走智英さんプロフィール

1982年、佐賀県出身。生徒の約5割が学年10位以内という地域きっての定員制進学塾・ブレストを運営。剣道や挫折の経験を通じて学んだ「勉強はスポーツだ!」をスローガンにし、また「競争を楽しみ、実社会で折れない子どもを育てる」ことをミッションに掲げている。授業はライブに加え、映像やITを駆使して運営。武雄市の公立中に英語の外部講師として招かれるなど、教育者としての評価も高い。
●WEBサイト
http://www.buresuto.com/
●ブログ「地域NO.1 進学塾ブレストブログ」
http://ameblo.jp/inu-the-husky0802/

『月刊私塾界』2013年8月号掲載