通信教育の先駆者である株式会社Z会(静岡県三島市)と、学習塾向け業務システムを開発販売する株式会社POPER(東京都中央区)。は、Amazon Web Services(AWS)を活用しているという共通点を持つ。Z会の情報システム部部長の内藤正史氏と、POPER代表取締役の栗原慎吾氏にクラウドで挑む教育DXについて語ってもらった。
変化する市場に対応しながら基幹システムを刷新
――まずは簡単に、お二人の自己紹介をお願いいたします。
POPER 代表取締役 栗原慎吾氏
栗原 POPERは学習塾に特化した業務効率システム「Comiru」を開発販売していて、現在5000教室以上でご利用いただいています。おかげさまでこの分野のシェアNO.1となっています。 私自身、塾の経営経験があるのですが、保護者の悩みを解決する場でもあるなど、塾は面白い世界だなぁと思った反面、アナログな業界だとも感じました。何とかそれを改善し、塾業界のDXに貢献できればと起業。業務を効率化することで先生方が生徒と向き合う時間を増やし、生徒の変容に少しでも役立てればとの想いで日々取り組んでいます。
内藤 通信教育として90年以上の歴史があるZ会は基本的にはBtoCですが、近年は学校の学力調査をお手伝いするなど、BtoBの分野にも事業を拡大中です。 ミッションは「最高の教育で未来を開く」で、生徒自身の未来だけではなく、社会の未来を開く力も養いたいとサービスを展開しています。
Z会 情報システム部 部長 内藤正史氏
――最近の動向についてお聞かせください。
内藤 開発当初より、当社の基幹システムは独自のプラットフォーム上に構築していたのですが、2019年から徐々にAmazon Web Services(AWS)へ移行していきました。 古いプラットフォームだったので移行するには相当なコストがかかることは承知していましたが、このままではサービスが陳腐化するという危機感があったため一大決心をしました。2024年にようやくローンチでき、一山越えた状態です。 長期に渡るプロジェクトで大変だったのは、私たちがやりたいことも、市場も、競合も変化していったこと。しかし資金投資を惜しまないなど、経営陣が理解と協力を示してくれ、恵まれていたなと感じます。
栗原 私たちも拡張しづらいプラットフォームを使っていたため、去年、AWSに移行しました。 Comiruを稼働し続けなくてはならないので、決断にはかなりの覚悟が要りましたが、実際に移行してみると、AWSは柔軟性や拡張性に富んでいて、お客様の声をどんどん取り入れられるなと感じています。おまけにコストまで下がるなど、いいこと尽くめです。
内藤 本当、AWSは価格も良心的で、有り難いですよね。
データを活用して新しい付加価値を還元
――自社のビッグデータの活用については、どのようにお考えですか。
栗原 学習時間やテスト結果をはじめ、Comiruには様々なデータが入っていますが、そうした情報をお客様に還元するようにしています。 しかしながら、分析したい内容は学習塾によって異なります。試しにある企業のプライベートなクラウドと、Comiruをつなげてみたところ大変好評でしたので、今後はお客様が自由にデータを活用できるようにしていきたいです。
内藤 Z会は学校での利用も増えているため、今後は「先輩・後輩の点数に比べて自分のクラスの生徒がどうだったか」などがわかるようにしたいです。 また自塾でデータを分析するよりも、コンサル的にアドバイスがほしいと考える学習塾もあるはずなので、AIでデータを解析できるようなサービスを整えたいですね。AIを活用すれば生きる力の育成や、学習サポートがもっと充実すると思います。
学習塾のDX化のご支援を加速
――セキュリティ面に不安を持つ塾経営者層もおられますが、その点に関してはどうお感じですか。
栗原 AWSに関していえば、セキュリティはとても強靭なので安心できると思います。 それからプラットフォームの安全性だけではなく、現場での対策も掛け合わせることが不可欠はないでしょうか。メールからウィルス感染するケースも多いですからね。当社では各パソコンにセキュリティソフトを入れたり、スタッフに勉強会を開くなどして対策を強化しています。
内藤 AWSには、セキュリティに必要なサービスが揃っているので、頼もしく感じます。 それにプラスして私たちも現場でのセキュリティ対策を強め、リスクを一つひとつつぶしています。 また便利に使いたいという社員の気持ちはわかるので、同じく教育もしっかりおこなっています。
――今後の展望をお聞かせください。
栗原 今まではComiruありきでご提案していましたが、それでは使いづらいことがよく理解できました。そこで大手に関しては、先方の基幹システムでご利用できるようComiruをカスタマイズするなど、現在は私たちのほうが柔軟に変化しています。 また知見が貯まってきたため、今後はアプローチし切れていなかった塾の皆様へお届けできればと考えているほか、AWSに基幹システムを移行した経験を活かし、皆様の様々なお悩みにお答えできればと思っています。ぜひお気軽にご相談ださい。
内藤 簡単にログが残せるデジタルのよさを活かせば、学校、塾、通信教育といったあらゆる学習シーンを統合でき、質の高いサポートができると考えています。 デジタルのよさを存分に活かし、紙では成し得なかったサービスをご提供できるようブラッシュアップしてまいりますので、何かお困りのことがあればぜひお気軽にご連絡ください。
月刊私塾界2024年12月号掲載
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