その数、実に約700名。去る8月26日、最高気温35℃に迫る猛暑もなんのその、続々と親子連れが集まった。開催されたのは、『大阪市立水都国際中学校』のオープンスクールだ。同校は、大阪市が設置し学校法人大阪YMCAが運営するという我が国初の公設民営型中高一貫校だが、その注目度の高さを裏付ける盛況ぶりとなった。
米国などではすでに一般化している公設民営校。そのメリットはやはり、公立校ならではの低学費と、独自性の高い教育を両立できることだ。同校では、グローバルビジネスや地元経済を担う人材育成を掲げ、国際理解と英語教育に力を入れる方針を打ち出しており、9月1日よりIB候補校となり、IB認定校となる準備を進めている。
この日のオープンスクールでは、そうした教育目標を反映したワークショップを実施。参加者らは、ブロック玩具を用いて思考を具体化する『レゴ®シリアスプレイ®メソッド』(以下、シリアスプレイ)と、“新しい大学入試”からの応用問題に挑んだ。
ワークのファシリテーターを務めた熊谷教諭
シリアスプレイとは、「お題」に基づきブロックで作品を作って自由に配置し、メンバー間で意見交換を行うもので、企業のチームビルディング研修などにも用いられる。今回のお題は「アヒル」だ。親も子どもも思い思いに、その意匠や配置に頭をひねり、意図を説明した。“新しい大学入試”の応用は、「LOVE」「HOPE」という2つの単語を立体化して並べた芸術作品を見て、「あなたならこの『LOVE』と『HOPE』の間に何を置くか、そしてその意図は?」というものだ。
親子一緒になって、ブロック玩具でアヒルを作る。重要なのは思考を形にすることだ
いずれも正解などない。重要なのは「思考」を具体的な形として「表現」することと、「なぜそうしたのか」をメタ認知し、相手に伝える「伝達」だ。これにより、漫然と頭の中にある抽象的な思考を論理的に整理したり、伝えたりする力を育てる。ファシリテーターを務めた熊谷優一教諭は「準備してきたことを再現するだけの学力観が変わりつつある。本校ではこうした教育にどんどん取り組んでいきたい」と語る。
後半の体験授業では、物質の電導性の有無をゲーム感覚で実験する授業を実施。特徴的なのはグループで意見交換しながら進めていくことと、外国人教師によって英語で実施されることだ。いわゆるイマージョン教育の要素で、英語力や国際感覚を育てていくのだ。同校では多くの外国人を教員として雇用するが、一般の公立校と異なり、彼らを独自採用できる点も公設民営校のメリットといえよう。
体験授業を行うネイティブの先生。同校では外国人教師を多数採用する予定
物質の電導性をさまざまな実体験を通じて学んだ体験授業
参加したある保護者は「私たちが受けてきた教育とまるで違い、驚いている。何より、子どもが楽しみながら学ぶ姿勢を見せてくれたのが嬉しい」と期待を寄せる。進む教育改革の中、「新しい学校の在り方」への注目はますます高まりそうだ。