4~9月の半年間に、3カ月以上学費を滞納した私立高校生徒の割合は1.09%で、1998年度の調査開始以降、過去最低だった前年同期から0.02ポイント増加したと24日、全国私立学校教職員組合連合(全国私教連)が発表した。経済的な理由で中退した生徒の割合は0.01%で横ばいだった。
日本最大級の中高生向けライブ学習サービス「スマホ学習塾 アオイゼミ」を運営する株式会社葵(東京・新宿区、石井貴基代表)は、11月25日、KDDI株式会社によるコーポレートベンチャーキャピタル「KDDI Open Innovation Fund」、株式会社マイナビ、株式会社電通デジタル・ホールディングス、日本政策金融公庫などを調達先として、総額2.8億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
アオイゼミは、ライブ配信の利点を活かし、受講する生徒が実際に教室にいるのと同じように、リアルタイムに講師に質問したり、ほかの生徒とコミュニケーションを図りながら学習を進めることができる。アオイゼミを受講する生徒からは、「いつでも見られる学習動画は、いつでも見ない」や、「ライブ授業は配信時間が決まっていて、全国の学生と一緒に学べるからモチベーションが上がり、習慣化できる」といった声も寄せられている。
今回の資金調達を受け、同社はさらなる経営体制の強化を図る。10月には前年同月比で200%以上の成長を果たし、平日の19時から配信されるライブ授業に、連日3000人を超える生徒が全国で受講している。この急激な生徒増に対応するため、新しい配信システムの構築や、個々の生徒に最適な学習コンテンツを薦めるレコメンド機能などを盛り込んだ学習管理システムを強化するとともに、学習コンテンツの拡充を図るため、大手予備校で指導経験のある人気プロ講師の採用を進めながら、新規科目の開講やコンテンツ数を増やす。
また、今回の資金調達にともない、葵に出資するKDDI株式会社の運営するコーポレートベンチャーキャピタルおよび、事業会社の株式会社マイナビとはそれぞれ、「auスマートパス」や「マイナビ進学」と連携して、双方のサービス向上のための相乗効果を狙う。
株式会社サイバーエージェント(東京・渋谷区、藤田晋代表)の連結子会社である、小学生向けのプログラミング教育事業の株式会CA Tech Kids(東京・渋谷区、上野朝大代表)は、任天堂株式会社(京都府京都市、君島達己社長)と11月14日(東京会場)と11月23日(大阪会場)に共催で「ゲームクリエイター養成講座 with SUPER MARIO MAKER」を開催した。
本講座は任天堂のゲームクリエイターから直接ゲームづくりについて学びことのできる特別無料講座。任天堂の現役の開発者から、ゲーム開発において心がけていることや、どうすればプレイヤーに楽しんでもらえるかというユーザー目線に学べる他、任天堂のWiiUソフト「スーパーマリオメーカー」を用いてオリジナルのゲームコースづくりに挑戦し、完成した作品についてプレゼンテーションを行う。
今回のイベントは各会場20組ずつの定員で募集。告知は主に同社のサイトだけだったにも関わらず、東京、大阪の2会場に累計約600件の応募があった。「マリオ」の知名度にだけではなく、プログラミング教育への意識の高さが伺える。
11月23日は、祝日にも関わらず、大阪会場のTech Kids School大阪梅田校に抽選による20組の小学生と保護者が出席した。CA Tech Kids大阪支社長の黒川広貴氏が進行役を務め、同イベントがスタート。実際に「スーパーマリオメーカー」を教材にしながら、任天堂のゲームクリエーターからゲーム作りの極意をレクチャーした。
ワークショップを交えながら、「ゲームは遊んでくれる人のために作る」ことを丁寧に説明。参加した小学生は、同講座を通じて、ただゲームを楽しむだけではなく、モノ作り独特の「産みの苦しみ」を体感していた。
「スーパーマリオメーカー」は本年9月10日に発売され、全世界で既に100万本以上販売されている任天堂WiiUのソフト。世界的に大人気となっている「スーパーマリオ」のステージを自由に作成できるほか、自分が作成したコースをインターネットにアップロードし世界中にシェアすることもでき、これまでに計320万以上のコースが作成され、累計1億3600万回以上プレイされている。
CA Tech Kidsは2013年5月に設立。運営する小学生向けのプログラミングスクール「Tech Kids School」では、小学生1年生から6年生まで、現在約430名の小学生がプログラミングを学んでおり、スマートフォンアプリやゲームの開発に取り組んでいる。同社は引き続きプログラミング学習の機会創出と普及を通じて、子どもたちの「アイデアを実現する力」の育成に努めていく。
11月9日に、紀尾井フォーラム(東京・千代田区)にて、デジタル教科書教材協議会(DiTT)が、「デジタル教科書の位置づけはどうなる? 〜文科省検討会議について」と題したシンポジウムを開催した。会場は満員になり、DiTTに対する関心の高さが伺えた。
パネリストとして、新井健一氏(株式会社ベネッセホールディングス ベネッセ教育総合研究所理事長)、堀田龍也氏(東北大学大学院情報科学研究科教授)、片岡靖氏(DiTT参与、一般社団法人日本教育情報化振興会)、中村伊知哉氏(DiTT専務理事、慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授)、石戸奈々子氏(DiTT事務局長、NPO法人CANVAS理事長)が登壇。
まず、「『デジタル教科書』の位置付けに関する検討会議」の座長を務めている堀田氏から、同検討会議について説明があった。
「教科書や教材をデジタル化すれば、先生たちも学習を展開しやすくなり、授業の準備も楽になると思います。例えば反転授業を行うためには、今はコンテンツから作成しなくてはならないが、そういうものも事前に用意されていれば、もっと教育は充実すると思います」と堀田氏は言う。
そのためには、細かな概念を決め、その位置づけ、関連する教科書制度の専門的な検討を行う必要が生じる。また、関連する法律などは、多岐に渡り、これらをクリアにするには、何年もかかることが予想される。それらを具体的に、どのようにするべきかを検討しているのが、堀田氏が座長を務めている「『デジタル教科書』の位置付けに関する検討会議」である。
その検討会議は現在、ヒアリング調査を行っている段階で、2016年夏ごろに中間まとめを予定し、2016年度中に結論が出ることになっている。
同検討会議(第4回)で配付された資料「『デジタル教科書』に関する検討の視点について」には、「デジタル教科書」ではなく「デジタル〝版〟教科書」と表記されている。これについて、堀田氏は、デジタル版教科書は、紙の教科書をデジタル化した教科書であり、この言葉を暫定的に取り入れることで、議論を円滑に進めようとしていると語り、教科書に焦点を絞っている。今回のディスカッションでも、「デジタル版教科書」について議論された。
現在の教科書の制度について、登壇者全員、よくできていると口を揃える。その中で、デジタルの方がわかりやすい、教えやすいということはもっとたくさんあるのではないかという意見や、それをうまく活用したものを作らなくてはならない、という意見も多くあった。
その検定については、「一体どこまでを検定の範囲にするのかを慎重に議論しないといけない」(堀田氏)、「デジタル教材とリンクして、拡張すればラーニングのデータを解析できる可能性を作る必要がある」(新井氏)、「紙の技術はそのまま使い、指導要領の内容が載っているかを検定し、コストを抑えながら、まずは、デジタル版を作っていく流れが必要」(片岡氏)、「音声や映像を使い、子どもたちが表現力や想像力を生かして、コミュニケーションできる教科書が望まれる。無償配布になるようにしたいが、現実的には難しい。そのためには、まずは導入できるようにするのが、現時点では最良なのでは」(中村氏)というような意見が述べられた。
そして、デジタル版教科書と周辺にある教材と結びつけるようなインターフェースを作る必要があり、メタデータ、履歴も含めた標準化を検討していく必要があるのではないかということが議論された。
また、現在の教科書制作の参入企業は数が限られている。しかし、デジタル版教科書には、参入障壁を設けるべきではないとの意見が多数あった。加えて、紙版の教科書がなければ、デジタル版教科書の制作ができないのではなく、デジタル版だけの制作も認めるべきだという意見も。その中で、堀田氏は、
「デジタル版のみの制作を認めていかないと、今後デジタルを生かした良い教科書は出てこないかもしれない。しかし、ある意味参入障壁を下げることになり、現在の教科書会社に対して、教科書の質の担保も含めて、調整する必要があるかもしれません」と語り、議論を深める必要性を語った。
中村氏は語る。「DiTTの姿勢として、例えば予算400億円が450億円になりそうになったとしても、難しいからやめようという姿勢ではなく、だったら50億円増やす、あるいは(子どもたち未来のために)倍にしようというメッセージを発信しないといけないと思っています。つまり、子どもたちの教育環境をもっと豊かにするべきです」
今後、DiTTは、教育の情報化推進法案を作り、これを提示していこうと考えているそうだ。そして、2020年にどのように形にしていくかを議論しつつ、2030年、2045年を見据えた今後のプランを作っていきたいと考えている。理想を掲げつつ、現実的な落としどころを模索するDiTT。その動向に注目したい。