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絶滅種スライゴオオサンショウウオ 日本で発見 池袋の水族館で公開中

 絶滅したと考えられていた世界最大の両生類「スライゴオオサンショウウオ」が、実は日本国内で生きていたことが明らかになった。東京・池袋のサンシャイン水族館では、現在開催中の特別展「真夜中のいきもの展」でその姿が一般公開されている。
 このスライゴオオサンショウウオは、中国原産で国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストにも「絶滅寸前」として掲載される希少種。以前は「チュウゴクオオサンショウウオ」と同一と考えられていたが、京都大学などの研究グループによるDNA解析の結果、別種であることが判明した。

ニッスイと新日本科学、ニホンウナギ人工種苗の大量生産で共同研究

 ニッスイは4月7日、新日本科学と共同で、ニホンウナギの人工ふ化した稚魚「人工種苗」の大量生産技術に関する研究を進めると発表した。すでに2024年10月から共同研究を開始しており、2027年度をめどに事業提携の可否を判断する。

 ニホンウナギは国内流通の大半が、稚魚の「シラスウナギ」を天然から採捕し、養殖する形で供給されている。水産庁によると、1980年代以降、シラスウナギの採捕量は低水準で推移し、減少傾向が続いている。こうした中、人工種苗による安定供給の確立は喫緊の課題とされる。
 新日本科学は2014年から人工種苗の研究を開始し、2017年に生産に成功。2019年には鹿児島県沖永良部島に研究施設を開設し、基礎研究を進めてきた。一方、ニッスイはこれまでブリの人工種苗大量生産で培った技術を持ち、今回の共同研究でそのノウハウを応用する。
 両社は今後、親魚からふ化させたウナギの稚魚を安定的に育成・量産するための技術開発を進め、天然資源への依存からの脱却を目指す。

NASA予算大幅削減案、科学ミッションに深刻な影響 ゴダード閉鎖の可能性も

 アメリカ政府が2026年度予算案の草案を各省庁に送付し、NASAの次年度予算が大幅に削減される可能性が浮上した。米メディアの報道によると、NASAの総予算は20%減額され、科学プログラムの予算は半減する見通し。宇宙望遠鏡や金星探査計画の中止、さらにゴダード宇宙飛行センターの閉鎖まで検討されており、各方面から深刻な懸念の声が相次いでいる。

 草案によれば、天文物理学や太陽物理学、地球科学、惑星科学の各予算は軒並み30〜50%の減額となり、2026年以降に打ち上げ予定の赤外線宇宙望遠鏡「ナンシー・グレース・ローマン」や、40年ぶりとなる金星探査機「ダヴィンチ」は中止が避けられない情勢。また、火星探査ローバー「パーサヴィアランス」が採取したサンプルを地球に持ち帰る「MSR計画」も停止の可能性が高まっている。
 さらに、今回の草案にはNASAの主要拠点であるゴダード宇宙飛行センターの閉鎖案も盛り込まれた。天文・惑星・地球観測の中核拠点で、約1万人の職員と契約者を抱える同センターの閉鎖は、NASAの科学ミッションに壊滅的な影響を及ぼすとみられる。
 予算案には、イーロン・マスク氏も「懸念すべき事態」とコメント。バイデン政権下でNASA長官を務めたビル・ネルソン氏も、「NASAの科学を蹂躙すれば、有人探査にも影響する」と批判した。
 この予算案は今後、米議会での審議に入るが、歳出委員会のクリス・ヴァン・ホーレン上院議員は「科学ミッションは国家安全保障と技術革新に直結する。ゴダードの機能を削ぐのは危険だ」と述べ、徹底抗戦の構えを示した。
 一方、4月9日に上院商務委員会で承認公聴会が行われた次期NASA長官候補のジャレッド・アイザックマン氏は、民間宇宙飛行士の経験を持ち、有人探査の推進を公約に掲げている。しかし、その翌日に示された今回の草案は、同氏の方針と大きく矛盾する内容であり、今後のNASA運営の行方に注目が集まる。

ドイツ新興企業の試験ロケット、打ち上げ直後に爆発

 ドイツの宇宙開発新興企業イザール・エアロスペースが開発した試験ロケット「スペクトラム」が3月30日、ノルウェーで打ち上げられたが、数十秒後に水中に落下し、爆発した。同ロケットは、欧州初の軌道ロケット打ち上げを目指して設計されており、スウェーデンや英国などもこの分野への参入に意欲を示している。

 現在の衛星打ち上げ市場では、イーロン・マスク氏のスペースXが米国からの打ち上げを主導するほか、エアバスとサフランが共同出資するアリアングループが仏領ギアナで打ち上げを行っている。また、スペースXは世界各地で衛星通信サービス「スターリンク」を展開し、存在感を強めている。
 ドイツ航空宇宙産業連盟のトップは今回の試験について、「初の打ち上げは今後の進展につながる」と評価。そのうえで「欧州は宇宙における主権を早急に確保する必要がある。スターリンクに代わる通信網は存在すべきだ」と述べ、欧州独自の宇宙開発の重要性を強調した。

ISSから9カ月ぶりに帰還した宇宙飛行士が会見 宇宙船の不具合を語る

ISS滞在が当初予定の1週間から宇宙船の問題で予想外に長引き、9カ月以上を地球に帰還できなかったNASAの宇宙飛行士、サニ・ウィリアムズさんとバッチ・ウィルモアさんが帰還後、初の記者会見に臨んだ。
 2人は3月18日、帰還用の宇宙船でパラシュートでフロリダ沖に着水。無事帰還を果たした。

 記者会見でウィルモアさんは、長期にわたるミッションの結果として、「宇宙船を開発したボーイング社だけでなく、自分自身も含め全員に責任がある」と述べた。誰かを責めることなく、前向きに今回の経験を生かすべきだと強調した。
 また、トラブルが発生した「スターライナー」については、得られた教訓をボーイング社に伝え、今後の宇宙船開発に役立てることを誓った。

土浦一高 12年ぶりに科学の甲子園全国大会に出場

 茨城県代表として県立土浦一高(同県土浦市真鍋)が、「第14回科学の甲子園全国大会」に12年ぶりに出場する。大会は、3月21日から24日まで、茨城県つくば市のつくば国際会議場とつくばカピオで開催される。土浦一高のメンバーは、本番に向けて実験や学習を重ね、「全力で楽しみたい」と意気込みを見せている。

 大会には全国47都道府県の代表校が出場し、1日目には化学、地学、生物、物理、数学、情報の6分野から出題される筆記試験を行う。2日目には、科学的な知識を応用して課題を解決する実技競技が行われ、各競技の成績点数を合算して優勝チームを決定する。
 土浦一高の出場メンバーは、有志で集まった8人の生徒。2年生の原田飛駆人さん、多田創平さん、藪内智悠さん、徳永開さん、大久保佑紀さん、金子拓生さん、1年生の佐藤拓実さん、大澤直人さんの7人が、放課後など限られた時間で実験を繰り返し、知識を深めてきた。メンバーはそれぞれ卓球部、陸上部、弦楽部に所属しており、部活動の合間に熱心に学んでいる。
 大会最終日には、会場近くの研究施設や科学館を見学するほか、学校同士の交流会も開かれる予定だ。土浦一高のメンバーは、学びながら楽しむことをモットーに、全国大会に臨んでいる。

GoogleのAI 10年かかるはずの薬剤耐性問題をわずか2日で解決

 Googleは2025年2月、Gemini 2・0を基にした科学研究に特化したAIアシスタント「AI co-scientist」を発表した。このAIは、特に生物学や医学分野において研究を支援し、効率的な問題解決をサポートする。最近の報告によると、AI co-scientistは、10年にわたる研究成果を持つ細菌の薬剤耐性問題にわずか2日で解答を見つけ出すという驚異的な結果を示した。

AI mirrors experimental science to uncover a novel mechanism of gene transfer crucial to bacterial evolution | bioRxiv
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2025.02.19.639094v1.full
Google’s AI co-scientist could enhance research, say Imperial researchers | Imperial News | Imperial College London
https://www.imperial.ac.uk/news/261293/googles-ai-co-scientist-could-enhance-research/
Google’s AI ‘co-scientist’ cracked 10-year superbug problem in just 2 days | Live Science
https://www.livescience.com/technology/artificial-intelligence/googles-ai-co-scientist-cracked-10-year-superbug-problem-in-just-2-days

 この成果は、アメリカのワシントン大学などの研究チームによって発表されたもので、薬剤耐性菌による死者が2050年までに3900万人を超えるとの予測がなされている中で、病原菌が薬剤耐性を獲得するプロセスを理解し、その対策を講じることが急務であるとされている。
 特に注目すべきは、イギリス・インペリアル・カレッジ・ロンドンのホセ・ペナデス教授が率いる研究チームによる長年の調査結果。彼らは、細菌に薬剤耐性をもたらす「cf-PICIs(カプシド形成ファージ誘導性染色体島)」という遺伝的要素に着目し、これがどのようにして細菌に感染し、耐性を引き起こすのかを調査した。
 ペナデス教授らは、cf-PICIsがファージと呼ばれるウイルスの移動性遺伝要素を利用して、細菌に感染するメカニズムを解明。通常のファージが細胞に遺伝物質を注入する際に使う「尾部」を持たないcf-PICIsが、他のファージの尾部と相互作用し、さまざまな種類の細菌に感染することを突き止めた。この発見は2025年2月11日、未査読論文としてbioRxivに公開された。
Chimeric infective particles expand species boundaries in phage inducible chromosomal island mobilization | bioRxiv
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2025.02.11.637232v1
 これに先立ち、ペナデス教授らの研究チームは、GoogleのAI co-scientistに対して「cf-PICIsが異なる細菌種にどのように感染するか」という問題について仮説を立てるよう依頼しました。AIには、ファージサテライトに関する背景情報やcf-PICIsに関する主要な論文が提供されましたが、研究チームの新たな発見については伝えられていませんでした。
 結果、AI co-scientistはわずか2日間で、ペナデス教授らの研究と同じ結論にたどり着き、薬剤耐性に関する新たな視点を提供した。このようなAIの迅速かつ正確な問題解決能力は、今後の科学研究において画期的な進展をもたらす可能性を秘めている。

小型ロケットZEROを開発するインターステラテクノロジズ、文部科学省のSBIR事業で14.4億円の追加交付が決定

 宇宙輸送と宇宙利用を通じて地球の課題解決を目指す宇宙の総合インフラ会社インターステラテクノロジズ株式会社(北海道・広尾郡⼤樹町、稲川 貴⼤ 代表取締役 CEO)は2025年2月21日、スタートアップ等による研究開発を促進する文部科学省の「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」において、14.4億円の追加交付が決まった事を発表した。フェーズ1および2を含めた累計交付額は最大80.7億円となった。

 この事業は、SBIR(Small Business Innovation Research)制度においてスタートアップ等の有する先端技術の社会実装の促進を目指すもの。インターステラテクノロジズは宇宙分野(事業テーマ:民間ロケットの開発・実証)で2023年9月に採択され、フェーズ1として最大20億円が交付された。2024年9月にはステージゲート審査を通過し、フェーズ2として最大46.3億円の交付が決定している。今回の追加交付は事業を加速し、事業目標を着実に達成することを目的として、有識者からなるステージゲート審査委員会にて決まったもの。
 世界の小型衛星打上げ需要は民間宇宙ビジネスの市場拡大、安全保障領域での重要性の高まり、衛星コンステレーションといった新しいアプリケーションの登場などを背景に、打上げ数が2016年の141基から2023年には2,860基と約20倍に急増している。これに伴い、米国では2024年に年間158回、中国でも68回の打上げと宇宙輸送能力を飛躍的に向上させている一方、国内では7回にとどまっている。国は宇宙戦略基金の基本方針において、2030年代前半までに基幹ロケットと民間ロケットでの国内打上げ能力を年間30件程度確保し、国内外の多様な打上げ需要に応えることを目標に掲げている。インターステラテクノロジズは低価格で高頻度打上げが可能なロケットZEROの開発により、国内の自立的な宇宙アクセス拡大に貢献するとともに、国際競争力のある宇宙輸送サービスを実現していく。

2025年4月 日本初、人工衛星による地球低軌道での宇宙バイオ実験ユニットの実証実験へ

 株式会社IDDKは、無人でも自動で作動する宇宙バイオ実験装置「Micro Bio Space LAB(MBS-LAB)」のトライアルミッション「MBSLAB-ZERO」を、地球低軌道で稼働させる実証実験を実施する。ドイツの宇宙スタートアップであるATMOS Space Cargo社との共同ミッションとしてATMOSのPHOENIX CapsuleにMBS-LABを搭載し、2025年4月にSpaceX のFalcon 9ロケットで打ち上げを予定している。
 このミッションでは、IDDKの顕微観察技術であるMicro Imaging Device (MID)技術を搭載した実験ユニットで宇宙(地球低軌道上)での顕微観察を含めた機能動作実証試験を行うことで、人工衛星を活用した宇宙バイオ実験の実現可能性を検証し、宇宙環境を活用した創薬、アンチエイジングなど様々なライフサイエンス分野の研究を後押しすることで、軌道上ライフサイエンス研究の新時代を切り開くことを目指す。また、この実証実験は2024年CAMPFIREで行われたクラウドファンディングの支援を受けて実施される。

 IDDKのキーテクノロジーは、特許取得済みの半導体センサーベース顕微観察技術「Micro Imaging Device(MID)」で、従来の顕微鏡のような対物レンズを必要としない。軽量、省スペースで高精細かつリアルタイムでの生体サンプル観察を可能にする。
 宇宙ミッションでは、ペイロードのサイズや重さが打ち上げコストに直結するが、MIDは従来の顕微鏡に比べ大幅な軽量化と省スペース化を実現できる。MIDを搭載したMBS-LABは、地球低軌道上における微小重力などの宇宙環境での細胞や小型生物の応答を無人の小型装置で観察できるようになる。


<ミッションの目的>
 今回が初となるMBS-LABの実証実験「MBSLAB-ZERO」ミッションは、今後の大規模な商業・学術向けの宇宙環境を利用した研究プラットフォームの構築に重要なステップとなる。IDDKは主に以下の3点を今回のミッションの目的としている。
1.オートメーション運用の実証
MID技術が地球低軌道(LEO)の微小重力環境下で、電源供給やデータ管理システムなど、自動化されたシステムで連続的に顕微観察が行えることを実証する。
2.リアルタイムのデータ取得実証
微小重力下でのMIDやセンサーから顕微観察や実験環境のデータをリアルタイムに取得できることを実証し、生物サンプルを用いた幅広い研究に活用できることを示す。
3.国際宇宙ステーション(以下、ISS)以外での宇宙バイオ実験の可能性を実証
MBS-LABを用いることにより人工衛星での宇宙バイオ実験プラットフォームが可能であることを実証し、ISS以外での宇宙バイオ実験手段となり得ることを示す。2030年のISS運用終了が近づく中、人工衛星を活用した宇宙バイオ実験プラットフォームを実証することにより、宇宙ステーションに依存しない新たな実験・研究環境の選択肢を世界に提供する。

(サイエンス)もののけ姫「サン」にちなんだ新種の深海魚がみつかる

 新たに発見された深海魚「Branchiostegus sanae」が、スタジオジブリの名作アニメ映画「もののけ姫」の戦姫サンにちなんで命名された。この魚の特徴的な顔のしま模様が、サンの顔に似ていることから名付けられたという。

 中国の研究者らが発見したこの新種の魚は、アマダイ科アマダイ属に属し、深海の極端な深さに生息していることが多い。遺伝子解析によって新種であることが確認され、研究者はその特徴的な模様にサンを重ねて、「sanae」という種名を選んだ。
 サンは、宮崎駿監督の「もののけ姫」に登場するオオカミに育てられた少女で、自然を守るために戦う姿が描かれている。映画は日本で大ヒットし、興行収入は190億円を超えた。
 研究の主著者である黄皓晨氏は、「サンは自身を森の一部と見なし、それを守るために戦う姿が深く印象に残る。この映画は、人間と自然の複雑な関係を掘り下げ、両者の調和のとれた共存のメッセージを伝えている。この命名を通じて、私たちもそのメッセージを反映させたいと考えている」と述べた。
 アマダイは、東アジアおよび東南アジアの水産物市場で一般的に見られる魚だ。
 アマダイ科の多様性は比較的低く、アマダイ科には31種、アマダイ属には19種しか記載されていない。
 アマダイ属の新種は、過去34年間で3種しか確認されていないという。