Category: 塾ニュース|サイエンス

土浦一高 12年ぶりに科学の甲子園全国大会に出場

 茨城県代表として県立土浦一高(同県土浦市真鍋)が、「第14回科学の甲子園全国大会」に12年ぶりに出場する。大会は、3月21日から24日まで、茨城県つくば市のつくば国際会議場とつくばカピオで開催される。土浦一高のメンバーは、本番に向けて実験や学習を重ね、「全力で楽しみたい」と意気込みを見せている。

 大会には全国47都道府県の代表校が出場し、1日目には化学、地学、生物、物理、数学、情報の6分野から出題される筆記試験を行う。2日目には、科学的な知識を応用して課題を解決する実技競技が行われ、各競技の成績点数を合算して優勝チームを決定する。
 土浦一高の出場メンバーは、有志で集まった8人の生徒。2年生の原田飛駆人さん、多田創平さん、藪内智悠さん、徳永開さん、大久保佑紀さん、金子拓生さん、1年生の佐藤拓実さん、大澤直人さんの7人が、放課後など限られた時間で実験を繰り返し、知識を深めてきた。メンバーはそれぞれ卓球部、陸上部、弦楽部に所属しており、部活動の合間に熱心に学んでいる。
 大会最終日には、会場近くの研究施設や科学館を見学するほか、学校同士の交流会も開かれる予定だ。土浦一高のメンバーは、学びながら楽しむことをモットーに、全国大会に臨んでいる。

GoogleのAI 10年かかるはずの薬剤耐性問題をわずか2日で解決

 Googleは2025年2月、Gemini 2・0を基にした科学研究に特化したAIアシスタント「AI co-scientist」を発表した。このAIは、特に生物学や医学分野において研究を支援し、効率的な問題解決をサポートする。最近の報告によると、AI co-scientistは、10年にわたる研究成果を持つ細菌の薬剤耐性問題にわずか2日で解答を見つけ出すという驚異的な結果を示した。

AI mirrors experimental science to uncover a novel mechanism of gene transfer crucial to bacterial evolution | bioRxiv
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2025.02.19.639094v1.full
Google’s AI co-scientist could enhance research, say Imperial researchers | Imperial News | Imperial College London
https://www.imperial.ac.uk/news/261293/googles-ai-co-scientist-could-enhance-research/
Google’s AI ‘co-scientist’ cracked 10-year superbug problem in just 2 days | Live Science
https://www.livescience.com/technology/artificial-intelligence/googles-ai-co-scientist-cracked-10-year-superbug-problem-in-just-2-days

 この成果は、アメリカのワシントン大学などの研究チームによって発表されたもので、薬剤耐性菌による死者が2050年までに3900万人を超えるとの予測がなされている中で、病原菌が薬剤耐性を獲得するプロセスを理解し、その対策を講じることが急務であるとされている。
 特に注目すべきは、イギリス・インペリアル・カレッジ・ロンドンのホセ・ペナデス教授が率いる研究チームによる長年の調査結果。彼らは、細菌に薬剤耐性をもたらす「cf-PICIs(カプシド形成ファージ誘導性染色体島)」という遺伝的要素に着目し、これがどのようにして細菌に感染し、耐性を引き起こすのかを調査した。
 ペナデス教授らは、cf-PICIsがファージと呼ばれるウイルスの移動性遺伝要素を利用して、細菌に感染するメカニズムを解明。通常のファージが細胞に遺伝物質を注入する際に使う「尾部」を持たないcf-PICIsが、他のファージの尾部と相互作用し、さまざまな種類の細菌に感染することを突き止めた。この発見は2025年2月11日、未査読論文としてbioRxivに公開された。
Chimeric infective particles expand species boundaries in phage inducible chromosomal island mobilization | bioRxiv
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2025.02.11.637232v1
 これに先立ち、ペナデス教授らの研究チームは、GoogleのAI co-scientistに対して「cf-PICIsが異なる細菌種にどのように感染するか」という問題について仮説を立てるよう依頼しました。AIには、ファージサテライトに関する背景情報やcf-PICIsに関する主要な論文が提供されましたが、研究チームの新たな発見については伝えられていませんでした。
 結果、AI co-scientistはわずか2日間で、ペナデス教授らの研究と同じ結論にたどり着き、薬剤耐性に関する新たな視点を提供した。このようなAIの迅速かつ正確な問題解決能力は、今後の科学研究において画期的な進展をもたらす可能性を秘めている。

小型ロケットZEROを開発するインターステラテクノロジズ、文部科学省のSBIR事業で14.4億円の追加交付が決定

 宇宙輸送と宇宙利用を通じて地球の課題解決を目指す宇宙の総合インフラ会社インターステラテクノロジズ株式会社(北海道・広尾郡⼤樹町、稲川 貴⼤ 代表取締役 CEO)は2025年2月21日、スタートアップ等による研究開発を促進する文部科学省の「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」において、14.4億円の追加交付が決まった事を発表した。フェーズ1および2を含めた累計交付額は最大80.7億円となった。

 この事業は、SBIR(Small Business Innovation Research)制度においてスタートアップ等の有する先端技術の社会実装の促進を目指すもの。インターステラテクノロジズは宇宙分野(事業テーマ:民間ロケットの開発・実証)で2023年9月に採択され、フェーズ1として最大20億円が交付された。2024年9月にはステージゲート審査を通過し、フェーズ2として最大46.3億円の交付が決定している。今回の追加交付は事業を加速し、事業目標を着実に達成することを目的として、有識者からなるステージゲート審査委員会にて決まったもの。
 世界の小型衛星打上げ需要は民間宇宙ビジネスの市場拡大、安全保障領域での重要性の高まり、衛星コンステレーションといった新しいアプリケーションの登場などを背景に、打上げ数が2016年の141基から2023年には2,860基と約20倍に急増している。これに伴い、米国では2024年に年間158回、中国でも68回の打上げと宇宙輸送能力を飛躍的に向上させている一方、国内では7回にとどまっている。国は宇宙戦略基金の基本方針において、2030年代前半までに基幹ロケットと民間ロケットでの国内打上げ能力を年間30件程度確保し、国内外の多様な打上げ需要に応えることを目標に掲げている。インターステラテクノロジズは低価格で高頻度打上げが可能なロケットZEROの開発により、国内の自立的な宇宙アクセス拡大に貢献するとともに、国際競争力のある宇宙輸送サービスを実現していく。

2025年4月 日本初、人工衛星による地球低軌道での宇宙バイオ実験ユニットの実証実験へ

 株式会社IDDKは、無人でも自動で作動する宇宙バイオ実験装置「Micro Bio Space LAB(MBS-LAB)」のトライアルミッション「MBSLAB-ZERO」を、地球低軌道で稼働させる実証実験を実施する。ドイツの宇宙スタートアップであるATMOS Space Cargo社との共同ミッションとしてATMOSのPHOENIX CapsuleにMBS-LABを搭載し、2025年4月にSpaceX のFalcon 9ロケットで打ち上げを予定している。
 このミッションでは、IDDKの顕微観察技術であるMicro Imaging Device (MID)技術を搭載した実験ユニットで宇宙(地球低軌道上)での顕微観察を含めた機能動作実証試験を行うことで、人工衛星を活用した宇宙バイオ実験の実現可能性を検証し、宇宙環境を活用した創薬、アンチエイジングなど様々なライフサイエンス分野の研究を後押しすることで、軌道上ライフサイエンス研究の新時代を切り開くことを目指す。また、この実証実験は2024年CAMPFIREで行われたクラウドファンディングの支援を受けて実施される。

 IDDKのキーテクノロジーは、特許取得済みの半導体センサーベース顕微観察技術「Micro Imaging Device(MID)」で、従来の顕微鏡のような対物レンズを必要としない。軽量、省スペースで高精細かつリアルタイムでの生体サンプル観察を可能にする。
 宇宙ミッションでは、ペイロードのサイズや重さが打ち上げコストに直結するが、MIDは従来の顕微鏡に比べ大幅な軽量化と省スペース化を実現できる。MIDを搭載したMBS-LABは、地球低軌道上における微小重力などの宇宙環境での細胞や小型生物の応答を無人の小型装置で観察できるようになる。


<ミッションの目的>
 今回が初となるMBS-LABの実証実験「MBSLAB-ZERO」ミッションは、今後の大規模な商業・学術向けの宇宙環境を利用した研究プラットフォームの構築に重要なステップとなる。IDDKは主に以下の3点を今回のミッションの目的としている。
1.オートメーション運用の実証
MID技術が地球低軌道(LEO)の微小重力環境下で、電源供給やデータ管理システムなど、自動化されたシステムで連続的に顕微観察が行えることを実証する。
2.リアルタイムのデータ取得実証
微小重力下でのMIDやセンサーから顕微観察や実験環境のデータをリアルタイムに取得できることを実証し、生物サンプルを用いた幅広い研究に活用できることを示す。
3.国際宇宙ステーション(以下、ISS)以外での宇宙バイオ実験の可能性を実証
MBS-LABを用いることにより人工衛星での宇宙バイオ実験プラットフォームが可能であることを実証し、ISS以外での宇宙バイオ実験手段となり得ることを示す。2030年のISS運用終了が近づく中、人工衛星を活用した宇宙バイオ実験プラットフォームを実証することにより、宇宙ステーションに依存しない新たな実験・研究環境の選択肢を世界に提供する。

(サイエンス)もののけ姫「サン」にちなんだ新種の深海魚がみつかる

 新たに発見された深海魚「Branchiostegus sanae」が、スタジオジブリの名作アニメ映画「もののけ姫」の戦姫サンにちなんで命名された。この魚の特徴的な顔のしま模様が、サンの顔に似ていることから名付けられたという。

 中国の研究者らが発見したこの新種の魚は、アマダイ科アマダイ属に属し、深海の極端な深さに生息していることが多い。遺伝子解析によって新種であることが確認され、研究者はその特徴的な模様にサンを重ねて、「sanae」という種名を選んだ。
 サンは、宮崎駿監督の「もののけ姫」に登場するオオカミに育てられた少女で、自然を守るために戦う姿が描かれている。映画は日本で大ヒットし、興行収入は190億円を超えた。
 研究の主著者である黄皓晨氏は、「サンは自身を森の一部と見なし、それを守るために戦う姿が深く印象に残る。この映画は、人間と自然の複雑な関係を掘り下げ、両者の調和のとれた共存のメッセージを伝えている。この命名を通じて、私たちもそのメッセージを反映させたいと考えている」と述べた。
 アマダイは、東アジアおよび東南アジアの水産物市場で一般的に見られる魚だ。
 アマダイ科の多様性は比較的低く、アマダイ科には31種、アマダイ属には19種しか記載されていない。
 アマダイ属の新種は、過去34年間で3種しか確認されていないという。

ミクロの世界を身近にする指先サイズの高倍率顕微鏡レンズ、「ミクロハンターMH-X250」の一般販売開始

「ミクロハンターMH-X250」は、スマートフォンにピタッと装着するだけで高倍率・高精細な顕微鏡観察が可能になる新世代の顕微鏡レンズ。指先サイズながら、光学250倍の倍率を実現し(スマホ機能を活用すれば最大1200倍)、科学教育や研究、クリエイティブな用途など幅広く活用できる。

 過去のレンズシリーズの購入者からは、『今まで見えていた世界はほんの数パーセントだったと感動しました』といった喜びの声が寄せられている。最新レンズの「ミクロハンターMH-X250」は、今年1月下旬にクラウドファンディングでの先行販売&配送を終え、多くの支援者から好評を得ている。そして今回、一般販売を開始することで、より多くの方々に「ミクロの世界の面白さ」を体験できる機会を提供する。

「ミクロハンターMH-X250」は、単なる観察ツールではなく、創造力をかき立てるデバイス。ミクロという新しい視点で世界を切り取る事で、アーティストはミクロの世界をインスピレーションとして活用可能。
 また、家庭や教育現場では、学生が実際にミクロの世界を体験することで、科学への興味を深めるきっかけになる。


「ミクロハンターMH-X250」の主な特徴
・250倍の高倍率:微細な構造までクリアに観察可能。
・スマホ対応:iPhone・Androidの両方で使用可能。
・コンパクト設計:持ち運びやすく、どこでも観察が可能。
・高精細レンズ搭載:科学教育や研究用途にも適した高品質な光学設計。
・動画・写真撮影機能:スマホで簡単にミクロの世界を記録。


価格と購入方法
「ミクロハンターMH-X250」は、ミクロハンター公式ショップにて販売中。
【ミクロハンター公式ショップ】
https://bit.ly/4k6x2vt
価格:6,980円(税込)

軟X線で細胞内の「化学地図」を描く 新開発の軟X線分光顕微鏡で窒素・酸素の化学状態を詳細に可視化することに成功

 東京大学物性研究所の櫻井快博士課程学生(同大学大学院工学系研究科物理工学専攻)、木村隆志准教授と竹尾陽子助教、井上圭一准教授と寳本俊輝特任研究員、吉見一慶特任研究員、原田慈久教授、理化学研究所放射光科学研究センターの志村まり研究員、高輝度光科学研究センターの大橋治彦室長らによる研究グループは、化学状態の違いをもとに細胞内の微細構造を高分解能に観察できる、新たな元素イメージング技術を開発した。

 大型放射光施設SPring-8から発振される高輝度軟X線に、独自開発の軟X線用ミラーであるウォルターミラー(注2)を組み合わせ、さまざまな元素の軟X線吸収スペクトルの高空間計測を可能にしました。また、細胞内部に存在する窒素や酸素の化学状態を観察し、多彩な微細構造を捉えられることを示した。
 高空間分解能かつラベルフリーで、タンパク質や核酸、脂質、糖質といった生体分子に含まれる化学結合の種類や価数の違いを元素選択的に捉えられるため、単純な顕微鏡像からは識別困難な未知の微細構造も捉えられます。蛍光タンパクなどの標識が困難な低分子のイメージングなどを通して、細胞機能の解明や疾患研究への新たなアプローチとして期待される。
 この成果は米科学誌「Applied Physics Letters」に1月31日(現地時間)掲載された。

2030年のISS運用終了後の民間主導宇宙ステーション参画を決定

 文部科学省は、2030年に運用終了予定の国際宇宙ステーション(ISS)後継機について、米企業の開発する新たな宇宙ステーションに民間主体で参画する方針を固めた。米国は、後継機の開発・運営を民間企業に委ねる計画で、日本側はISSの「きぼう」実験棟のような施設を民営化して設置することも検討している。これにより、日本の有人活動拠点を民営化し、宇宙ビジネスの拡大を目指す。

極地研の南極隕石コレクション 国際地質学会議で選定「IUGS Geo-collection」

 国立極地研究所(極地研)の「南極隕石コレクション」が、2024年8月、韓国・釜山で開催された第37回国際地質学会議(IGC)において、国際地質科学連合(IUGS)の「IUGS Geo-collection」に選定された。このコレクションは、南極地域観測隊の隕石探査活動に基づいており、地球惑星科学における貴重な試料として国内外の研究者によって広く利用されている。また、この選定は、アジアで唯一の認定例となり、南極隕石が科学的、歴史的、教育的価値を持つ資源であることが再確認された。

【国立科学博物館】太平洋のハゲナマコから4新種候補を含む10種を発見 世界各国の博物館標本の遺伝子解析から多様性を明らかに

 独立行政法人国立科学博物館(篠田謙一 館長) の小川晟人特定非常勤研究員(分子生物多様性研究資料センター)、藤田敏彦動物研究部長(動物研究部)、蛭田眞平准教授(昭和大学富士山麓自然・生物研究所、当館協力研究員)らは、ロシア シルショフ海洋学研究所、ニュージーランド国立水大気研究所、オーストラリア ヴィクトリア博物館研究所、国立研究開発法人海洋研究開発機構の研究者らと共同で、世界各地の博物館の収蔵標本の遺伝子解析から、これまで1種とされてきた太平洋のハゲナマコ属が4種の新種候補を含む10種であることを明らかにした。ハゲナマコ属は太平洋の深海底に広く生息するナマコ類だが、名前の由来である全身の表皮が剥げやすい特徴から、底曳き網採集では原形を留めないほど標本が傷ついてしまい形態比較による正確な分類が困難だった。国立科学博物館を含む世界各国の6カ所の博物館に収蔵された太平洋各地のハゲナマコ属標本の遺伝子解析によって、これまでムラサキハゲナマコ1種に同定されてきた太平洋のハゲナマコ属が4種の未記載種(新種候補)を含む10種であることを明らかにした。深海生態系の多様性の理解が進むことで、深海生物の多様化様式の解明につながることが期待される。
 この研究成果は2024年12月24日に海洋生物学分野の国際誌「Marine Biology」にオンライン掲載された。

▼研究のポイント

・ 表皮がはげやすく標本が採集時にボロボロに傷ついてしまうために形態比較が困難だった深海性のハゲナマコ属の種多様性を遺伝子解析により見直した。
・ 国立科学博物館に加え、世界各地の博物館に収蔵された標本を活用することで、太平洋全域に及ぶハゲナマコ属の標本を網羅的に比較分析した。
・太平洋に広く分布する1種と考えられてきたムラサキハゲナマコは、遺伝子と形態の特徴が異なる10種であり、そのうち4種の新種候補を含むことを明らかにした。