2016年度入試で東京大が推薦入試、京都大が推薦と書類や面接で選考するアドミッション・オフィス(AO)入試を初めて導入する。国立大学協会がこのほど発表したアクションプランでも、推薦やAOなどの合格者を21年度までに全定員の30%に拡大することを掲げており、多様な人材獲得に向けた、独自入試の導入はさらに進み、今後も広がりそうだ。
2005年に開校し、今年開校11年目を迎えた片山学園中学校・高等学校(富山市東黒牧、片山浄見理事長)は、夏休み中の学生寮を活用して塾の合宿を誘致している。今年3月に改行した北陸新幹線を利用すれば東京からも2時間程度でアクセスできることから、首都圏の中学受験塾に対しても、教室や学生寮を活用した受験対策の合宿開催をサポートしている。
学園としては、首都圏の受験生に同学園のことを知ってもらうことで、次年度以降の受験者を増やし、優秀な生徒の獲得につなげるという。毎年、東大をはじめ国公立・私立の難関大学に合格者を出している県内有数の進学校となり、将来的に、1学年の定員120人のうち、3分の1にあたる40人の生徒を県外から迎え入れることを目指し、2015年度は県外出身の生徒が2割を超えた。
同学園は、受験合宿で各学習塾による受験対策の授業をできるように教室を開放するほか、同学園の教師による理科実験やプラネタリウムを使った星空観察会など同学園独自のプログラムも実施する。宿泊先は敷地内にある学生寮の部屋と食堂が利用でき、同学園に入学した場合の寮生活や学習環境の一端を体験してもらう絶好の機会と捉えている。
名古屋市の進学塾「パシフィックゼミナール・EDIX」は、8月12日から3泊4日の日程で、昨年に続き2回目の受験合宿を同学園で実施し、21人の小学生が参加。同塾の吉村寛之塾長は「合宿にかかる費用や安全性を考慮すると塾にとっても大変ありがたい」と話し、合宿に参加した小学6年生の男子生徒は「家ではこんなに勉強できないけど、合宿では楽しみながら勉強できた。あと2日くらい泊まりたい」と笑顔で話してくれた。
昨年は、同塾から参加した受験生17人のうち6人が、今年1月に同学園が実施した名古屋会場の入試を受験するといった成果も挙げている。同学園中学校の望月尚志校長は「実際に学園生活を体験してもらえたのが非常に効果的だった」と説明する。
北陸新幹線の開業にともない、首都圏から富山への移動時間が大幅に短縮することから、同学園は「子供を寮に預ける保護者や受験生本人の精神的な負担も減る」とみており、首都圏からの受験生増にさらなる期待を掛ける。
文部科学省は8月25日、小学6年と中学3年の全員を対象にした2015年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を公表した。平均正答率で、下位3県の平均と全国平均との差が7科目で前回より0・1~0・4ポイント縮まり、都道府県間の成績格差は下位自治体の改善により縮小傾向が続いた。95%以上の小中学校でテスト結果の分析を通じた指導改善が定着したことが要因とみられる。3年ぶりに実施された理科では、中学生の「理科離れ」が進む現状が浮かんだ。
全国の国公私立の小中学校約3万校に在籍する約213万人が4月にテストを受けた。国語と算数・数学の2教科で主に基礎的知識を問うA問題と、知識の活用力を問うB問題が出されたほか、理科は抽出調査だった12年度に続き2回目で、全員参加は今回が初めてだった。
都道府県別の平均正答率では秋田県と北陸3県が例年同様上位を占めた。
秋田県の小中学生は全10科目中6科目で平均正答率(平均点)が全国で首位になった。平均正答率は、小6の国語A76・0▽国語B76・4▽算数A81・2▽算数B51・5▽理科66・7▽中3の国語A80・8▽国語B70・7▽数学A68・4▽数学B46・9▽理科59・6で、全科目で、全国平均を4ポイント以上上回った。小学校では理科が富山(67・5)、福井(66・8)に続く3位だったほかは、すべて全国首位だった。中学校は国語A、Bが全国首位で、数学A、Bと理科は福井に続く2位だった。
福井県は、中3の数学A(正答率71・1%)、数学B(同47・7%)、理科(同61・3%)がいずれも全国1位で、ほかの科目も4位以内だった。3教科平均は小6が全国3位、中3は全国1位だった。
石川県の順位は、小6の国語Aが3位で昨年の全国14位から順位を上げた。国語Bは2位で昨年と同順位。算数Aと算数Bは2位で、ともに昨年3位から順位を上げた。理科は4位(12年は抽出調査で3位)。中3は国語Aが4位で昨年と同順位。国語Bが3位(昨年5位)、数学Aが3位(同4位)、数学Bが3位(同5位)と順位を上げた。理科は4位(12年は抽出調査で3位)。
富山県は、小6の理科の成績(平均正答率)が47都道府県でトップだった。小6、中3とも全教科で全国平均を上回り、いずれの教科も全国で上位を占めた。
大阪府の中学3年の成績が大幅に向上しているのが目をひく。府教委がテスト実施に先立ち、学校別結果を高校入試の内申点評価に活用する方針を打ち出したことが、結果的に成績向上につながった可能性がある。大阪府の中学3年の平均正答率は今回、国語・数学の4科目のいずれも、昨年度と同様に全国平均を下回った。しかし、全国平均との差が昨年度は2・8~4・4ポイントあったのに、今回は0・7~1・8ポイントまで縮まり、上昇幅は1・0~3・0ポイントに上った。
昨年度に小6算数Aが最下位ランクを脱した沖縄は今回も6位と学力を維持。25年度に改善した高知も、小6国語Aが6位と学力定着がみられた。
全国的に学力底上げが進んだ背景について、文科省の担当者は「学校現場で学力テストが本格的に活用されていることが一因」と指摘。同時実施された学校への質問紙調査によると、「自校の結果を分析し学校全体で課題を共有した」との回答が、小学校で97・9%、中学校でも95・7%に上った。文科省幹部は「各校が課題を発見し、授業を改善する良好なサイクルができている」と話した。