昨年、創立110周年を迎えた麴町学園女子中学校高等学校。伝統ある同校だが、ここ数年は教育改革に関する大きなトピックスが聞こえてこなかった。
しかし、今、財団法人実用英語推進機構代表理事であり、「英語教育の在り方に関する有識者会議」の委員も務める安河内哲也氏を特別顧問に招き、まさに大改革がおこなわれている。
そこで今回は、英語教育改革を中心に、次代を見据えた進化に挑む同校にフォーカスしたい。
麹町学園女子中学校・高等学校
校長 山本 三郎氏
特別顧問 安河内 哲也氏
「みらい型学力」
グローバル社会、情報化社会、そして大学入試改革に対応するためにこれから求められる力を、麴町学園女子中学校高等学校では総称して「みらい型学力」と呼んでいる。
その内容の一つは、「思考型授業」。講義型と思考型の学習を組み合わせた指導法を展開し、身につけた知識をもとに生徒間でディスカッションを行いながら理解を深めるために、各教科でアクティブラーニングを行う。
二つ目は、「みらい科」だ。これは、同校が独自に実施している進路教育プログラムだ。課題対応力や人間関係形成能力を感得できる「みらい論文」、「クリティカルシンキング授業」、自己理解、自己管理能力を醸成するための「レジリエンス教育」など多岐に渡っている。
三つ目は、「グローバルプログラム」である。同校では、中学2年生時には、全員参加のアイルランドへの海外研修旅行を用意している。また、中学3年生のGA・SAプレコースでは、3学期時にニュージーランドへの3ヶ月留学も用意し、英語を使うことから異文化理解、多様な人々との協働を通して学びを深めていく。
もちろん、希望者には短期・長期を問わず海外留学の門戸を開いている。
昨年16代校長として着任した山本三郎氏は、これらを掲げて学校改革に着手。さらに、英語科特別顧問に安河内哲也氏を招き、英語教育改革「アクティブイングリッシュ」を新たな柱に据えている。
「アクティブイングリッシュ」
昨年10月より特別顧問に就任した安河内氏と英語科でミーティングを重ね、共働して着々と改革を進めている。
例えば、英語科の10の約束である。その内容は、
1・授業では最新のテクノロジーをフル活用します。
2・授業の半分以上は生徒の言語活動に当てます。
3・すべての教員は音声を重視した指導します。
4・頭を使わない丸写しのような作業はやらせません。
5・教師も積極的に英語を話します。
6・無計画な宿題は出しません。
7・英語の授業では全文訳は書かせません。
8・決められた教材を中心に反復を重視します。
9・ネイティヴの音声を多く使います。
10・英語が楽しくなる工夫を授業に盛り込みます。
となっている。
これを公約し、実行に移すのは相当覚悟のいることだろう。
しかし、これらを実行するために、「英語は音声教育の徹底」、「ICTのフル活用」、「チームティーチング」、「アクティブラーニング」、「モチベーションを上げる体験」の5つの柱を中心に据え、4技能を磨き、使える英語を身につける取り組みを強化していく。
具体的な変化としては、2016年度の新中学1年生からは、これまでおこなってきた朝読書に加えて、毎朝10分の英語の音声活動を開始する。これは全国的にも類を見ない新しい取り組みだ。
もちろん、他学年の在校生に対しても同様に、導入準備を始めている。さらに、ユニークな試みとして英語の歌による合唱コンクールも計画されている。
ICTの活用については、全教室にプロジェクターとスクリーンが設置された。その使い方を生徒にもレクチャーし、朝の音声活動などを生徒が中心になり運営していく。さらに、無線LANも全教室に備え、海外の大学の講義をネット閲覧できるようにすることも検討している。
また、チームティーチングを導入することにより、教員間で教材の共有化やメソッドの統一が期待できる。そして、教員に時間的余裕が生まれ、空いた時間に研修をおこなうなど、指導力の研鑽に充てることができ、教員のスキル向上を図ることができる。
「アクティブラーニング」については、先に挙げたように、生徒が授業運営に参加することで、自ずと能動的に学ぶ環境が整備される。
また、平常点による定性的評価、CAN‐DOリストも導入される。
そして、「モチベーションを上げる体験」。同校には、校内英語村として、英語のみで運営されるスペース〝iLOUNGE〟が設置された。その中では、お菓子なども食べることができ、リラックスしながら、英語に親しむことができるようになっている。
また、〝多読ライブラリ〟を設置し、本棚には多数の洋書が置かれる。
さらに、教材の選定、作業型宿題の廃止、定期試験のフォーマットの統一、英語関係のイベントの誘致、英語コンテストなど、わずか数ヶ月で数えきれないほどの改革が実行されようとしている。
まさしく「アクティブイングリッシュ」である。
改革はまだ序章に過ぎない
安河内氏は言う。「この学校で英語教育を変えられなかったらどこでもできない。不易である過去の伝統も大事ですが、それに固執していれば輝を失ってしまいます。私学としての魅力を発揮するためには、常に次代を見据え、進化することが不可欠です」
また、山本校長は、「現在、授業時間は34時間体制ですが、来年からは7時間目を作り、その時間にキャリア教育や国際理解教育として、社会で活躍する女性を招いた授業等を行う予定です。しかし、まだ〝やります〟という段階です。本当に試されるのは、次年度。今、次年度に向けて様々な準備をしています」と語る。
麴町学園女子中学校高等学校は、これまでよりもスピードを上げ、高みを目指した改革を進めている。そうした改革は、同校だけでなく、他校、さらには公教育全体の試金石となるのではないだろうか。
ぜひ、新しい学校教育の旗手となってもらいたい。
■学校データ
学校法人 麹町学園
麹町学園女子中学校・高等学校
〒102-0083
東京都千代田区麹町3-8
http://www.kojimachi.ed.jp
TEL :03-3263-3011(代)
FAX :03-3265-8777
2017年1月12日(木)、21日(土)に入試説明会を実施