Category: 月刊私塾界

月刊私塾界2014年10月号(通巻402号)

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巻頭言

茨城県つくば市にある産業技術総合研究所において、現在非常に正確な時計が開発されている。イッテルビウム光格子時計だ。現在主に使用しているセシウム原子時計の1000倍の精度が出せる。
1秒の定義は、長い間地球の自転を基にしてきた。ところが地球の自転は徐々に遅くなっていること、季節により速度が異なることなどから、1956年から地球の公転が基準となった。
それがセシウム原子時計の開発により、67年から変更された。1億年に1秒の誤差しかないからだ。この正確さをもって地球の自転速度を計測し、72年から25回閏秒を用い、時刻を調整してきた。1000億年に1秒の誤差しかないイッテルビウム光格子時計。何に役立つのだろうか。
貢献が期待されていることの一つに、長さを正確に測定できるようになることがある。例えば位置測定だ。GPS人工衛星には原子時計が搭載され、時刻を示す電波を発信している。これを地上の受信機で受け、その時刻の差から位置を測定する。現在の測定誤差は数センチから数十センチ(日常使用されている車載GPSは誤差数十メートル。衛星の原子時計がポータブルタイプなため)。それが、数マイクロメートル(千分の一ミリ)になる。そうなると微細な地殻変動も宇宙から計測でき、火山噴火などを予測できる。地震の予知に発展する可能性もある。
教育における最先端とは何であろうか。その先に何を見詰めながら進んでいるのであろうか。

(如己 一)

目次

<<特集>>
    • 塾長の本棚
<<TOP LEADER COMPANY>>

龍澤学館グループ 龍澤 正美 理事長

<<挑む大学>>

近畿大学
西日本最大級の総合大学の
絶えざる挑戦と人づくり

<<新連載>>
  • 78 自ら動き出すチームにする方法 中谷彰宏
  • 80 学習塾の新ビジネス開拓論 末木佐知
  • 82 学習塾とマーケティング 中谷淳一
  • 96 咲かせよ桜 小林哲夫
      • 12 挑む私学① 龍谷大学付属 平安中学校・高等学校
        『チーム平安』で学校が変わる。組織が変わる。
      • 20 NEWS ARCHIVES
      • 54 教育サービス業界 企業研究 24 ベストティーチャー
      • 56 疾風の如く63 合格舎 代表 時田 啓光さん
      • 66 学習塾の空間づくり34
        The Complete Lesson最強塾
      • 70 挑む私学② 学校法人 東洋大学 京北中学校・高等学校
        国際社会を生き抜くための「哲学と力」を与えてくれる学校
      • 72 挑む私学③ 盛岡中央高等学校
        グローバル教育にいち早く取り組み、21校もの国際姉妹校との交流も盛んに。
      • 76 新米塾長のための 学習塾経営基礎講座 17
      • 88 新米塾長のための部下とサシで行きたいごはん屋さん 15
      • 91 クロスワードパズル「塾長の机」
      • 19 目次・巻頭言
      • 40 千里の道も一歩から ~編集長備忘録~
      • 68 学習塾フランチャイズ研究所 58
        今後急拡大が見込まれる武田塾の斬新な運営スタイルとは
      • 75 日本教育ペンクラブ・リレー寄稿 249
      • 84 井上郁夫の因数分解 7
      • 86 challenge~進化形jukuのカタチ 25 サカモトセミナー
      • 89 芸術見聞録 15
      • 90 中学生からの子育てスクランブル 31
      • 92 高嶋哲夫の「塾への応援歌」 150
      • 94 林明夫の「21世紀の地球社会」 110
      • 100 未之知也(いまだこれ知らざるなり)18
      • 103 論点2014 10 驚くべき実態。子どもの貧困率
      • 106 編集後記
      • 108 Book Review
      • 110 塾長のためのガジェット講座

月刊私塾界2014年9月号(通巻401号)

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巻頭言

5月に出雲を旅した折、三保神社を訪れた。全国各地にあるえびす神社の総本社だ。その近くにある大正レトロ感漂う「青石畳通り」を散策しているときだった。古い民家の軒先に燕の巣を発見した。巣の中で囀る雛たちを仰ぎ見ながら、長い間燕の巣を見なかったなぁと感傷に浸っていた。ふと気付くと、沢山の燕が、長い歴史を持つ港町を、勢いよく飛び回っていた。巣もあちらこちらにあった。何か豊かなものを感じた。
近年、燕は減少している。水田の減少により、餌となる昆虫が減ってしまったり、巣材となる良質の泥が減少したことが要因だ。また、住宅が高層化し、建材が変化し、土壁やモルタル壁が減り、泥が付きにくいタイルなどに替わった。また、家の軒先が狭くなったことも影響している。
自然や環境の変化以外に、悲しくなるような要因もある。人が巣を壊してしまうのだ。巣の周りに落ちる糞、その臭いと雛たちの鳴き声を嫌い、人間が除去してしまうのだ。天敵であるカラスの増加の次に来る原因である。
古来より、燕は農作物を食べる害虫を餌とすることから、益鳥とされてきた。また、春を告げる渡り鳥として、「巣を作ると商売が繁盛する」など、身近な鳥として親しまれてきたのに、である。多くの人々が燕を害鳥として見るようになってしまった。
これが減少の大きな要因とは、寂しい限り。段ボールで糞よけを設置したり、蒲鉾の板などで巣台を作ったり、共存の知恵を絞りたいものである。

(如己 一)

目次

<<特集>>
    • 塾教材目録 2014・秋
    • 2015年3月期 第1四半期決算を読む
<<TOP LEADER COMPANY>>

ウィザスグループ 生駒 富男 社長

<<日本の教育の鍵>>

嶋田 義皓 さん× 大川 翔 さん

      • 19 目次・巻頭言
      • 20 NEWS ARCHIVES
      • 40 千里の道も一歩から ~編集長備忘録~
      • 56 教育サービス業界 企業研究 23 シエンプレ
      • 66 学習塾の空間づくり 33 みやび個別指導学院(埼玉県越谷市)
      • 70 挑む私学2 江戸川学園取手小学校次代を担うリーダーの育成のカギは小学校にあり
      • 76 【寄稿論文】須原英数教室 塾長 須原 秀和氏『塾教育』の役割を考える(日本語原文)
      • 82 石田淳の「ケイゾクはチカラなり」(最終回)ゲスト 石田淳・行動科学マネジメント研究所 所長
      • 86 疾風の如く 62 創心ゼミ(東京都)代表 高田 康太郎さん
      • 107 論点2014 9 ここにも存在した待機児童。学童保育
      • 68 学習塾フランチャイズ研究所 57
      • 75 日本教育ペンクラブ・リレー寄稿 248
      • 88 challenge~進化形jukuのカタチ 24 J-P.O.P.
      • 91 芸術見聞録 14
      • 92 新米塾長のための 学習塾経営基礎講座 16
      • 96 中学生からの子育てスクランブル 30
      • 98 井上郁夫の因数分解 6
      • 100 林明夫の「21世紀の地球社会」 109
      • 102 高嶋哲夫の「塾への応援歌」 149
      • 104 未之知也(いまだこれ知らざるなり)17
      • 110 編集後記
      • 112 Book Review
      • 114 塾長のためのガジェット講座

[お詫び]須原秀和先生の論文「『塾教育』の役割を考える」の掲載について
『月刊私塾界』2014年9月号(通巻401号)の76-81ページに掲載された「【寄稿論文】須原英数教室塾長 須原 秀和氏『塾教育』の役割を考える(日本語原文)」については、国際教育学会(ISE)学会誌『クオリティ・エデュケーション』6号に掲載されたA study of the Role of Juku School Educationの日本語訳であるが、国際教育学会(ISE)から転載の許可を得る前に、掲載いたしました。この件について、国際教育学会(ISE)ならびに関係の皆さまに深くお詫び申し上げます。

月刊私塾界2014年8月号(通巻400号)

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巻頭言

「俺のイタリアン」や「俺のフレンチ」が話題になって久しい。現在も店舗網を拡大し、新たな業態を開発し続ける。毎日店舗前は行列ができ、行き交う人々が好奇の眼差しを投げる。
これら業態は、レストラン業界での標準化と独自性のトレード・オフである。これまであったものを否定し、食べる側、使う側である消費者目線からの、あるべき機能や品質における新たな創造である。価格、料理、店舗の立地、内装などの競争要素に関し、考え抜き、革新し続ける。高級食材を安価に提供するという、相反することを追求する。食材の原価率は非常に高いが、立食にし、客の回転率を上げる。低価格でも売り上げを伸ばし、利益が出るよう緻密に計算し尽くす。コスト対高級化、コスト対差別化のトレード・オフである。低価格と高級化を同時に追求している。相矛盾することを同時に追求する場合、往々にして中途半端な業態となってしまう。しかし、競争要素の適切な組み合わせにより、それを回避する。だから全くの空白地帯に参入し、成功を収めているのである。
学習塾業界でこれを実施しようとするとどうなるのであろうか。勿論組み合わせる競争要素は、異なるだろう。何をどのようにトレード・オフするか。ICTを取り入れることも、一案かも知れない。導入できる技術や企業のケイパビリティが、トレード・オフの方法に変化をもたらすことは、どの業界でも同じだ。
挑戦者は出て来ないものであろうか。

(如己 一)

目次

<<特集>>
    • 『月刊私塾界』通巻400号記念寄稿メッセージ
    • これまでの道 これからの希望
<<TOP LEADER COMPANY>>

日能研関東グループ 小嶋 隆 社長

<<緊急提言>>

永瀬 昭幸 氏
株式会社ナガセ 代表取締役社長
『人口2億人社会の実現へ』
夢と希望に満ちた、
活気あふれる日本へ。

<<新しい塾のカタチ>>

松田 悠介 氏 Teach For Japan 代表理事

<<連載>>
    • 22 キーパーソンに聞く 日本の教育の鍵 特別対談

松井 彰彦氏・東京大学大学院 経済学研究科教授
×中室 牧子氏・慶應義塾大学 総合政策学部准教授
公平性を保つところが「公」の強みであり限界でもある
「私」が関わることで公の弱点を補強できる

    • 28 NEWS ARCHIVES
    • 64 HOT TOPICS 第41回・青木経営フォーラムIN 富山 開催
      業界屈指のパイオニア 片山浄見氏の成功哲学に学べ!
    • 74 学習塾の空間づくり 32 かいせい こどもスクール(大阪府高石市)
    • 80 挑む私学 星野学園中学校

118年の歴史を誇る星野学園は「国際人教育」「習熟度別学習指導」「情操教育」が柱に

    • 86 挑む私学【特別対談】 駒込学園中学校・高等学校

河合 孝允 校長×青木 淳 多摩美術大学准教授
先生と生徒が対等に話せる環境が成長のための大きな糧となる

  • 92 近況を聞く 株式会社Believe(AJ安藤塾)安藤 大作 代表取締役社長
  • 96 疾風の如く 61 KJゼミナール(兵庫県) 塾長 金城 貴保さん
  • 134 【誌上セミナー】私塾界リーダーズフォーラム 東京大会
  • 140 【誌上セミナー】私塾界リーダーズフォーラム 大阪大会
      好評連載
  • 27 目次・巻頭言
  • 48 千里の道も一歩から ~編集長備忘録~
  • 84 学習塾フランチャイズ研究所 56
  • 91 日本教育ペンクラブ・リレー寄稿 247
  • 94 教育サービス業界 企業研究 22 どりむ社
  • 98 challenge~進化形jukuのカタチ23 はやぶさ進学教室
  • 100 新米塾長のための部下とサシで行きたいごはん屋さん 13
  • 102 芸術見聞録 13
  • 104 会社を建て直すためのリーダー養成塾(最終回)
  • 106 新米塾長のための 学習塾経営基礎講座 14
  • 108 中学生からの子育てスクランブル 29
  • 110 井上郁夫の因数分解 5
  • 112 林明夫の「21世紀の地球社会」 108
  • 114 高嶋哲夫の「塾への応援歌」 147
  • 116 未之知也(いまだこれ知らざるなり)16
  • 119 論点20148 知ってますか?通級指導
  • 122 編集後記
  • 124 Book Review
  • 128 塾長のためのガジェット講座

 

月刊私塾界2014年7月号(通巻399号)

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巻頭言

株式会社ファーストリティリングが、国内のユニクロ店舗に勤務する全パート・アルバイト約3万人の内1万6千人を正社員化すると発表した。彼ら・彼女らは、特定の店舗や地域に勤務地が限定される「R(リージョナル=地域)社員」と位置づけられる。正社員には、他に国内転勤はできるが海外転勤は望まない、もしくはその実力がない「N(ナショナル=国)社員」。海外事業にチャレンジする意思と実力を備えた「G(グローバル=世界)社員」の三分類される人事制度に変更する。これを皮切りに、様々な企業が、正社員化を進め始めた。理由は企業により異なるが、正社員化自体は好ましい。
ところが、内容が明らかになるに従い、一概に喜べる改革ではないと分かってきた。「R社員」の年収は、非正規の現在より上昇するが、300万円から400万円だという。
地域限定正社員を既に導入している日本郵政グループの例をみる(呼称は「新一般職」)。4月までに4700人が、新一般職に転換した。ボーナス(4・3カ月)が加算されるが、年収は55歳時点で最高450万円、平均300万円程度にしかならないという。
方や最近何かと話題が多い、グローバル人材。外国語に堪能で、何か専門的領域で高い技能を持つ人だ。だが、インドで働く(英語ができる)、国際会計基準に明るい会計士の年収はどのくらいだろうか。何と200万円から300万円。
夢を抱くことが難しい世界が続く。

(如己 一)

目次

<<特集>>
    • 新たな英語教育の兆し
    • 株式公開企業塾2014年3月期決算を読む
<<TOP LEADER COMPANY>>

株式会社ナガセ

<<シリーズ・著名人に聞く>>

原田 曜平 氏「さとり世代」をモチベートさせるには、
集団評価の採用とワークライフバランス

<<石田 淳のケイゾクはチカラなり>>

ゲスト花房 孟胤 氏 NPO 法人 manavee(マナビー)代表理事

<<連載>>
  • 14 挑む大学 慶應義塾大学「未来創造塾」
  • 20 NEWS ARCHIVES
  • 48 HOT TOPICS
  •    公益社団法人 全国学習塾協会 九州・沖縄支部の研修大会
         一般的なサービス業とは異なる「教育サービス業」では、
         ラ・ポールを築くことが重要

  • 58 学習塾の空間づくり 31 シェーン英会話 銀座本校(東京都中央区)
  • 76 近況を聞く 新教育総合研究会 株式会社
               (個別指導キャンパス・京大個別指導学院)
             福盛 訓之 代表取締役
  • 82 教育サービス業界 企業研究 21 凸版印刷
  • 84 疾風の如く 60 学習塾 delight (三重県)
               塾長 若林 高太さん
  • 88 新米塾長のための部下とサシで行きたいごはん屋さん 12
  • 98 井上郁夫の因数分解 4
  • 107 論点2014 7 学力格差解消のために
  • 19 目次・巻頭言
  • 40 千里の道も一歩から ~編集長備忘録~
  • 60 学習塾フランチャイズ研究所 55
  • 67 日本教育ペンクラブ・リレー寄稿 246
  • 86 challenge~進化形jukuのカタチ 22 ジェイ教育セミナー
  • 89 芸術見聞録 12
  • 90 会社を建て直すためのリーダー養成塾 12
  • 92 新米塾長のための 学習塾経営基礎講座 13
  • 94 新・授業改革を目指して 79
  • 96 中学生からの子育てスクランブル 28
  • 100 林明夫の「21世紀の地球社会」 107
  • 102 高嶋哲夫の「塾への応援歌」 146
  • 104 未之知也(いまだこれ知らざるなり)15
  • 110 編集後記
  • 112 Book Review
  • 114 塾長のためのガジェット講座

月刊私塾界2014年6月号(通巻398号)

巻頭言

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ピアソンなる企業をご存じだろうか。ロンドンに本部を置く、従業員約4万人、世界80数カ国に展開する、教育分野におけるグローバル企業だ。
 現在、アジア新興国のBOP(Bottomof the Pyramid : 低所得市場)に向け、積極的に事業展開している。「インパクト・インベストメント」という、収益を求めるだけでなく、社会や環境問題の解決を目的とする投資手法を用いる。「EdTec h(エドテック)」と呼ぶタブレットやインターネット等のICT技術を活用し、学習・学校管理ツールの提供に取り組んでいる。
 BOP層への教育おいては、発展途上国政府やNGOへの支援を通常考える。また、何らかの形で投資、或いは寄付行為する企業も、収益より社会や環境への貢献を重んじるCSR(corporate social responsibility : 企業の社会的責任)として捉えがちだ。
 しかし、ピアソンは異なる。10年かけてIRR(Internal Rate of Return :内部利益率)25%の投資収益を目標としている。
 更に驚くことに、BOPのセクションを率いるのは、ケイトリン・ドネリーさん、弱冠27 歳の才媛である。
 我学習塾業界はどうだろうか。東南アジアに進出している企業もあるが、一部の企業を除いては、現地の日本人を対象にしている。最近では企業規模にかかわらず、あらゆる分野でグローバル化が叫ばれているのに、である。一度思いを馳せては如何だろうか。ピアソンはアフリカへも進出し、成功を収めている。

(如己 一)

目次

<<特集>>
    • 幼児・低学年が溢れる塾
<<TOP LEADER>>

株式会社 市進ホールディングス市進教育グループ 下屋 俊裕 社長

<<シリーズ・著名人に聞く>>

佐々木常夫マネージメントリサーチ 代表取締役 佐々木 常夫 氏

<<石田 淳のケイゾクはチカラなり>>

ゲスト 佐々木 圭一 氏 コピーライター/作詞家/上智大学非常勤講師

<<連載>>
  • 14 挑む大学 大和大学
  • 20 NEWS ARCHIVES
  • 40 HOT TOPICS① 青木経営フォーラム IN 東京
        新しいノウハウで強力な塾づくりセミナー
  • 68 日本の教育の鍵 大阪府教育長▶中原 徹 氏
  •  

  • 72 近況を聞く 株式会社秀英予備校▶渡辺 武 代表
  • 74 学習塾の空間づくり 30 学習塾ショウイン リバレイン本校(福岡市博多区)
  • 76 HOT TOPICS② 「JJA教育フォーラム2014 in 大阪」開催
        所得格差が学力格差にならないために、私たちにできること
  • 82 教育サービス業界 企業研究 20 アプリゼミ(株式会ディー・エヌ・エー)
  • 84 疾風の如く 59 橋本算数パズル教室(東京都)主宰:橋本 龍吾さん
  • 88 新米塾長のための部下とサシで行きたいごはん屋さん 11
  • 98 井上郁夫の因数分解 3
  • 107 論点201 4 5 根深い問題。教育格差、学力格差
  • 19 目次・巻頭言
  • 42 千里の道も一歩から ~編集長備忘録~
  • 67 日本教育ペンクラブ・リレー寄稿 245
  • 86 challenge~進化形jukuのカタチ21 戸倉塾
  • 89 芸術見聞録 11
  • 90 会社を建て直すためのリーダー養成塾 11
  • 92 新米塾長のための 学習塾経営基礎講座 12
  • 94 学習塾フランチャイズ研究所 54
  • 96 中学生からの子育てスクランブル 27
  • 100 林明夫の「21世紀の地球社会」 106
  • 102 高嶋哲夫の「塾への応援歌」 145
  • 104 未之知也(いまだこれ知らざるなり)14
  • 110 編集後記
  • 112 Book Review
  • 114 塾長のためのガジェット講座

月刊私塾界2014年5月号(通巻397号)

巻頭言

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その日、不思議な感覚の朝を迎えた。何故か心が騒ぎ、落ち着かない。心配事がある訳ではないが、重苦しい気分だった。

今日は3月11日。東日本大震災発生から3年がたった、その日であった。全国各地で捧げられた祈り。復興へ向け必死に頑張る人々の強い意志。生活再建へ向けての被災者の不安。散り散りになってしまい、未だに帰村、帰宅の見込みがわからない原発被災者の絶望感。それらの思いが大きく、静かな「波動」となり、伝わってきていた。

それに気付き、思いを新たにした。2011年のその日、ただただ自然の猛威に驚いていた。3年後の復興における、地域間の差異、思いの異なりを知った。自分にできることは何か。一つのかかわりを決意した。

科学雑誌「Science」の発行元である米国科学振興協会第180回年次大会が、シカゴで開催された。東日本大震災関連の講演が、2012年年次大会では21件あったが、今年は3件と大幅に減少した。忘れ去られつつある。我が国でも風化しつつある。

皆さんの塾での対応や如何に。

「波動」「波」といえば、大きな、明るい、画期的なニュースが飛び込んできた。「重力波」である。

重力波は、1981年現自然科学研究機構長佐藤勝彦「インフレーション理論」などにより予言されていた。ハーバード大学等のチームが重力波の痕跡を検出した。理論を裏付ける直接証拠を初めて発見した。佐藤教授を含め、ノーベル賞級とのことだ。

(如己 一)

目次

<<特集>>
    • 企業成長に必要な人材の採用と育成とは
<<TOP LEADER>>

株式会社 興学社 興学社学園 池田 晃 氏

<<シリーズ・著名人に聞く>>

三菱綜合研究所理事長 東京大学総長顧問 小宮山 宏 氏

<<石田 淳のケイゾクはチカラなり>>

ゲスト 小杉 俊哉 氏 合同会社THS 経営組織研究所 代表社員 慶應義塾大学SFC 研究所 上席所員

<<連載>>
  • 14 挑む大学 法政大学
  • 19 目次・巻頭言
  • 20 NEWS ARCHIVES
  • 38 千里の道も一歩から ~編集長備忘録~
  • 48 近況を聞く 株式会社ベスト学院●碓井 裕章代表
  • 58 学習塾の空間づくり29 Freewill学習塾(東京都渋谷区)
  • 60 挑む私学 AICJ鷗州学園 中学・高等学校
  • 67 日本教育ペンクラブ・リレー寄稿 244
  • 82 疾風の如く58 TOB塾(兵庫県) 代表 山口 真史さん
  • 80 教育サービス業界 企業研究20 インターネット学習塾アオイゼミ(株式会社葵)
  • 84 challenge~進化形jukuのカタチ20 個人別指導塾フルスイング
  • 86 新米塾長のための部下とサシで行きたいごはん屋さん10
  • 87 芸術見聞録1092 新・授業改革を目指して78
  • 88 会社を建て直すためのリーダー養成塾10
  • 90 新米塾長のための 学習塾経営基礎講座11
  • 94 学習塾フランチャイズ研究所53
  • 96 中学生からの子育てスクランブル26
  • 98 井上郁夫の因数分解2
  • 100 林明夫の「21世紀の地球社会」 105
  • 102 高嶋哲夫の「塾への応援歌」 144
  • 104 未之知也(いまだこれ知らざるなり)13
  • 107 論点2014 5 複雑化する承認欲求
  • 110 編集後記116 Book Review
  • 114 塾長のためのガジェット講座

TOP LEADER Interview|中萬学院グループ 代表 中萬 隆信 氏

人間同士の真剣なぶつかり合いができる集団に。

sサブ1少子化が進む社会、変わりゆく教育環境の中で、塾はどう存続していけばいいのだろう。神奈川県で60年もの歴史を紡いできた『中萬学院グループ』の中萬隆信代表に、その答えを探るべく中長期ビジョンや取り組みなどをうかがった。

私立中高一貫校対策にも使命感を持って取り組む。

2014年は中萬学院グループとして60周年を迎えられます。どんな想いですか。

「60周年というのは、還暦にあたります。〝還る〞ということですから、私たちが『なぜ存続してこられたのか』、『なにが支持されてきたのか』を振り返って原点回帰はしますが、それに新しい時代のメッセージや提案をプラスして、進化していかなければいけないと思っています。

教育業界の環境は、明らかに変化しつつあります。グローバル人材を育成するための英語教育や、大学入試改革もそう。大学入試が改革されれば高校入試改革にもつながるでしょうし、そうすると小・中学生に必要な新たな提案もできます。少子化時代といって悲観的にならなくても、十分にビジネスチャンスはあると考えています」

公立中高一貫校の人気が拡大し、中学受験界にも変化が見られますが、どうお考えですか。

「確かに多くの私立中学にとっては厳しい時代になりましたね。景気がどうのと言うより、『ゆとり教育の見直し』『公立の進学校の復権』『公立中高一貫校の台頭』など、私学をとりまく環境は様変わりです。s建物外観

とりわけ、公立中高一貫校においては、今後も数年で新たな進学結果が出揃ってきます。多少の学校間差が顕在化しつつも、全体的には人気も高値安定となるでしょう。

しかし、一方で私は今後も私学に大いに期待しています。本来、中高一貫のカリキュラムの本家は私学です。大学入試も今後は学力に加え、人物重視の傾向が高まります。心ある私学にとっては大学入試や英語教育の新たな動きはむしろ望ましいことでしょう。例えば、神奈川を代表する進学校である聖光学院の新校舎では、一流のコンサートホールや体育館の充実など、『グローバル人材』の何たるか、そのメッセージを感じさせられます。英語だけではない、芸術も『世界共通語』ですし、健康・体力は全ての礎です。」

受験とは異なるプログラムでの塾づくり。

中萬学院グループの企業理念をお聞かせください。

「企業理念は変わらず〝CHUMAN流〞の通り。ただし、私たちが体験学習や合宿を行っているのは、必ずしも受験と切り離したプログラムを重視しているのではありません。塾の教室外の様々な学習機会の場創りによって、教科に対する、意欲・感心・興味を高めてもらいたいのです。水族館とのコラボなどは人気の高いプログラムとして定着してきました。sメイン

また私は、『花まる学習会』の高濱先生のファンの一人です。遊びをはじめ、子供の頃の様々な経験や他者とのふれあいは、その後の成長における強いメンタル作りに寄与すると信じています。先ほども述べたように、学力はもとより人物重視の傾向が高まるとすれば、それは『向上心』や『好奇心』・『探究心』といった生命力を裏付ける『心の強さ』が条件のひとつになるでしょうから。

もちろん塾である以上、学力・成績の向上が最優先課題です。だからこそ講師の授業の工夫や目の前の生徒への真剣な対応が全てです。その副産物として『僕(私)のためにこんなに考えてくれる人がいる』と、多少なりとも人間を肯定的に捉えてもらえたら何よりです。人間を否定的にみる大人が望ましいコミュニケーションを実現できるとは思えないからです。そのためにも私たち自身が高次元のコミュニケーション能力を持ち合わせ、より深い人間理解に努め、人間同士の真剣なぶつかり合いのできる集団でありたいものです。」

3〜5 年後の中期ビジョンについて、また取り組んでいることをお聞かせください。

「特段、目新しいことを考えているわけではありません。中学受験・高校受験・大学受験という3つの受験フィールドに、個別指導を加えた4つの事業部で中期的には展開し続けます。私たちの展開エリアは神奈川県の南西部に偏っていますから、中身の充実に努め、徐々に拡大していけばいいのです。個別のCGパーソナルは2教場東京にもありますが、成績向上の精度がより高まり次第、面展開する予定です。『成績向上の精度』、それは4つの事業部共通の課題であり、まだまだ深堀りすべき最大のテーマなのです。

但し、想定される大学受験の変化は、当然高校のみならず、小・中にも多大な影響を与えますし、英語学習の在り方などは、先行して準備を始めています。そのためのコンテンツやツールの開発も関連会社と協力しつつ進行しています。」

80周年あるいは100周年に向けての長期ビジョンはありますか。

「随分気の早い話ですね。今の塾という業態のままであるはずはないだろうとは思いますが。ただ、資源のない国の危機意識から、今後も教育産業は一定の市場規模を保ち続けるでしょう。

今後は当然、様々なデジタルツールやコンテンツが従来の教育サービスを変えていくでしょう。ただ人間って面白いもので、ハイテクになればなるほどハイタッチで最後は決まる。例えばうちの『東進衛星予備校』はどの教室も同じコンテンツを使用しているのに業績の差が激しい。結局は、そのコンテンツをどう活かすのか、教室長やスタッフの生徒へのアナログ対応力が浮上する。

もう一つの視点は、今後個人への教育サービスはより利便性を増していくとは思います。しかし一方で、この少子時代、集団的学習機会の意義は高まる面もあるでしょう。小中学生の場合、しっかりした指導者の直接的な学習空間と他者の存在意識は重要な要素だからです。」

大学受験指導事業部の井川隆成部長は、「東進が車メーカーだとしたら、我々はそのディーラー」とおっしゃっていましたが。

「そういう面もありますが。そこで言うディーラーとは車を売るのではなく車のある生活をサポートするディーラーであるべきですね。進学はその先の人生への手段です。車も望む生活のパートナー(道具)として、セダンかワゴンかスポーツカーなのかを選択する。肝心なのは、あくまでもディーラーはサポーターであり、強制的提案者であってはならないと思います。生徒が自ら真剣に将来を考え、『自分で決める』というプロセスを尊重しなくてはなりません。そのための資源と機会を充実させ、プロとして良きアドバイザーに徹することです。」

感動経験の多い人が、人に感動を与えることができる。

人材育成について力点をおいているところは、どんなところでしょう。

「スキルと人間力の向上と言っています。どんな職業でもスキル(技術)のない人は通用しない。例えば大工さんなら、釘をスピーディーに美しく打てる。それはもう我々素人とは比較にならない技術を有している。しかし私たちの業界ではただ『教える人』になるだけなら障壁は低い。だからその職掌において必要とされるコミュニケーション力や授業運営力や面談力、課題解決力はスキルとして身につけることを意識しないと怖いのです。

ここで言う人間力とは、講師を例にひとつの目標として『生徒の心に火をつける』力とでも言えばいいのでしょうか。『感動』が人を変える源であるなら、他者をスパークさせることのできる人物でありたい。そのためには講師自身がたくさんの感動体験を積み重ね、『感動のセンス』を高めておくことが大事ですね。広い意味で人としての勉強を続けることです。そう言えば子会社のエドベックは、来年から社内公用語を英語にします。だから私も英語の勉強を再始動しました。」

今年の新卒採用の状況はどうでしょう。

どこの塾でも人材採用には苦労されているようですが。「景気の回復は、ますます売り手市場になるでしょう。だからと言ってやみくもに採用を広げるわけにもいきません。この機会だからむしろ採用のあり方を見直しています。sサブ2

うちが大学新卒者を初めて採用したのは30年ほど前のことです。当時、私が教室長をしていた教場でアルバイトをしていた学生2人に声をかけたのです。うち一人は銀行に就職し、もう一人が入社してくれました。横浜国大の学生です。まだ売り上げが10億円もない頃ですし、社会的にも塾は就職先として認知されてもいませんでした。とても奇特な学生です。

しかし、その後の発展を支えてくれたのが彼を始めとした、それに続く勇気のある奇特な若者達です。うちは歴史が長いゆえ適度な安定期待を持たれることがありますが、ベンチャースピリットを大事にする風土を育て続け、『なにやら面白そうだから』と入社してくれる学生に、より一層積極的に活躍の場を提供できるよう努めたいと思います。」

『月刊私塾界』2014年3月号掲載

 

著名人に聞く|太田 英基 氏

思考の枠を世界に広げれば、人生の可能性は無限に広がる。s_m

「グローバルにビジネスを展開するとは、どういうことか?」一人の大人の問いが、時代の最先端を走っていた若者の人生を変えた。世界の人口は、70億人。世界の広さは、日本の約400倍。生きる舞台を世界に変えたら、人生はもっとおもしろくなる。

 

やりたいことは待っていても見つからない

東北の温泉町で生まれ育った僕にとって、東京は憧れの街でした。将来、経営者になりたいという漠然とした夢を持っていた僕は、都内にある私立大学の経営学科へ進学。これから始まる大学生活に胸を膨らませていました。

ところが、入学早々いろいろなサークルに参加してみたものの、どこにいても中途半端で、自分の居場所を見出せず… 。大学の授業も退屈で、新生活のモチベーションは下がっていくばかり。「大学生になったら、やりたいことが見つかるはず!」という根拠のない期待は、上京してすぐに砕けてしまったのです。

その時に思ったのが、「やりたいことは、自分から動かなければ見つからない」ということ。ならば、どうやって自分のやりたいことを見つけようか? そう思っていた時に手にしたのが、1枚のチラシでした。

仲閒と立ち上げた「タダコピ」

それは、学生だけで経営をしている小さなバーの求人でした。経営を学びたいと思って進学したものの、大学の授業では物足りなかった僕は、経営のノウハウを実践的に学ぶために、その仲閒に加わりました。s_3

その後、仲閒の一人と「タダコピ」を企画。「タダコピ」とは、コピー用紙の裏に広告を載せることで、コピー代をタダにするサービスで、「コピーを無料でしたい大学生」と「大学生に広告を届けるスペースが欲しい企業」をマッチングさせたもの。今では、全国160以上の大学でこのサービスを展開していますが、はじめから事がスムーズに運んだわけではありませんでした。

僕たちは、まず、ゼミの活動の一環として、トライアルコピー機を1台、大学に置いてもらうよう交渉しました。広告は大学の近くにある飲食店などにお試しとしてお願いをし、実際のコピー代は自分たちが負担をしました。こんなものが本当にビジネスになるのだろうか…? ところが、2週間の約束で試した8千枚のコピー用紙が、わずか1週間でなくなってしまったのです。トライアル期間中、僕たちは200人近くの学生にアンケートを取りました。紙質がイマイチ、裏の広告が透けるのがイヤなどの意見はありましたが、「このサービスの継続を希望するか?」という質問には、すべての学生からYESの回答があり、僕たちは確かな手応えを感じました。

その後、あるビジネスプランコンテストで最優秀賞を獲得したのを機に法人化し、さまざまなメディアに取り上げられたこともあって、事業は順調に拡大していきました。その頃の僕は、東京で、時代の最前線を走っている学生起業家と思い込んでいるところがありました。

僕の考えを一変させた本当の「グローバル」

そんな僕に、これまでの価値観を一変させる出来事がありました。起業して1年が過ぎたある日、友人に誘われて少人数の勉強会に参加しました。講師は、アメリカのコンサルティング会社・マッキンゼー&カンパニーの東京支社長を務めていた横山禎徳さん。横山さんの提案で、活動的な大学生を集めて話をしたいということで、幸運にも僕に声がかかったのです。集まった学生は7人。学生起業家、NPO理事など、当時の学生にしては、なかなかの活動的なメンバーでした。

そこで、横山さんは突然こんな質問をしたのです。「グローバルにビジネスを展開するとはどういうことか? 分かる人は?」

僕は自信を持ってこう答えました。「良いアイデアが浮かんだら、まず東京でやってみる。東京でうまくいったら、大阪、名古屋へ。東名阪でうまくいったら全国展開をし、日本でうまくいったらアジア、アメリカと広げていく。これがグローバルにビジネスを展開することだと思います。」

ところが、横山さんはキッパリこう言いました。「それは、多くの日本人の発想だが、違う。本当にグローバルに動いているビジネスマンは、良いアイデアを浮かんだら、『それが地球のどこで求められているのか』をまず考えるんだ。例えば、Aというアイデアが思いついたら、日本人には必要ないかもしれないけれど、メキシコ人には必要とされているかもしれないと思考する。例えば、ブラジルで流行っているBというサービスをイスラエルに持っていっても通用するのではないかと思考するんだ。それが、世界を舞台に、グローバルにビジネスをすることなのだよ。」

僕は自分の発想の乏しさに愕然としました。僕がこれまで「たくさんの人」と思っていたのは、日本という小さな国だけに限られていたことに気づかされました。

世界には、自分の知らない世界があった

実際、僕は世界でビジネスをする土俵にさえ立てていなかったのです。日本でタダコピが広がり、いよいよ上海へ! というチャンスをもらった時、僕らは自分たちのアイデアには自信があったけれど、それをアピールする語学力がなく歯がゆい思いをしたことがありました。その時、改めて痛感したのが、英語力の必要性です。

けれど、僕が実際に行動を起こすのは、それから2年も経った24歳の時でした。30歳になった時、どんな自分でありたいか? を考えたのです。そこで出てきたのが、「世界を舞台に活躍できる人間になりたい」という目標でした。そのために、今何をするか? を考え、挙がったのが次の3つです。

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①英語力
②世界中に仕事の相談もできる友達を作る
③世界中のリアルを自分の目で見て知る

そして、それらすべてを実現できるものとして浮かんだアイデアが、「世界一周の旅」だったのです。旅といっても、僕の場合は、その国で暮らす人についてもっと知りたいという気持ちが一番だったので、そのコミュニケーションツールとして英語は必須でした。そこで、まずフィリピンで3カ月間、英語を集中的に学びました。それから、バックパックに旅の衣類の他にスーツと革靴を詰め込み、「カウチサーフィン」という世界に550万人以上のユーザーがいるコミュニティーサービスを利用して、各国で会いたい人にアポイントをとり、世界を知る旅に出ました。2年間かけて訪れた国は、およそ50カ国。苦手だった英語を克服し、世界で暮らす1000人以上の人々と交流し、世界のリアルを肌で感じました。なかでも僕を刺激してくれたのは、自分の意志でその国を選び、そこで働いている同世代の日本人でした。

僕はゆとり教育が始まった頃に学生時代を過ごし、社会に出た時は不景気、就職難とネガティブな時代でした。グローバル人材の必要性も、「このままでは日本がヤバイ」という観点から言われ続け、だからこそワクワクできなかった。けれども、既に世界で活躍している先駆者たちは、みんなそれなりに苦労は経験しているけれど、日本を飛び出したことで、間違いなく人生の可能性が広がっているように感じたのです。そして、僕自身も、世界に飛び出たことで、自分の可能性が広がりました。

若者よ、世界を目指せ!

帰国後、僕はフィリピン語学留学での経験を生かし、留学クチコミサイトを立ち上げました。フィリピンで英語を学ぶことは、読み書きよりも、話す・聞くが苦手な日本人に最適なマンツーマンレッスンであること、物価や人件費が安いフィリピンだからこそ実現するコストパフォーマンスなど魅力はいくつかありますが、僕が勧めているのはそれだけではなく、そこで習得した英語をぜひ世界で活かして欲しいという思いがあります。s_2

フィリピンに滞在している時、こんな出来事がありました。僕はフィリピンで広告会社の仕事をしている23歳の若者たちと仲良くなり、彼らとお茶をしていました。その時、「転職について」の話題が出たのですが、彼らから出た言葉は、「俺は数年以内にイギリスに行きたいね!」「イギリス? 僕は香港かシンガポールだな。中国もおもしろそう」といったもので、国内ナンバーワンの広告会社への転職か、違う業界への転職を望んでいるのかと思っていた僕は、彼らの視野の広さに驚きました。彼らにとっての転職は、「どこの会社で」ではなく、「どこの国で」だったのです。

でも、今の僕は彼らと同じ思考を持っています。今は日本人向けの留学クチコミサイトですが、フィリピンには日本人より遙かにたくさんの韓国人が英語を学んでいます。こうした人たちの生の声を拾っていけば、クチコミサイトはより最新のリアルな情報を発信することができる。また、日本人や韓国人以外の国でも、英語を学びたい人はいるはずです。そう考えていけば、このビジネスはどこまでも可能性を広げていくことができるのです。

しかし、今の若い世代は、そういうやり方があることを知らずにいます。けれども、それは彼らがダメなわけではない。そういう生き方があるということを伝えてこなかった大人たちの責任だと僕は思います。だから、僕は大人の一員として、次の世代にはしっかりと伝えていきたいんです。これから頭の中に描く地図を、日本地図から世界地図に塗り変えていこう、可能性を拡げようって。日本がヤバイからではなく、世界がオモシロイから僕らは動いていくんだと。そう、僕は伝えていきます。

〈プロフィール〉
株式会社スクールウィズ 代表取締役 太田 英基(おおた・ひでき)

1985年、宮城県蔵王町出身。中央大学卒。大学2年の時に、ビジネスプランコンテストで最優秀賞を獲得し、株式会社オーシャナイズを仲閒と共に起業。広告事業「タダコピ」を全国の大学に広げる。丸5年働いた後、フィリピン英語留学を経て、「若者のグローバル志向の底上げ」を使命に、「サムライバックパッカープロジェクト」を立ち上げ、世界一周の旅へ。約2年間、50カ国を旅しながら、現地で働くビジネスマンを中心に1000人以上と交流する。帰国後は、講演・執筆活動をしながら、フィリピン留学のクチコミ情報サイト「School With(スクールウィズ)」を立ち上げる。

 

(取材・文/石渡 真由美)

月刊私塾界2014年4月号(通巻396号)

巻頭言

2014_04_hyoshiインドと中国が新たな人材供給源になるという。両国の人口の多さが一因だが、更に重要な要因がある。「インドと中国の学生がなにを学んでいるかという点だ。欧米の学生が学ぶジャンルが人文系の学問や芸術なども含めてきわめて多岐にわたるのに対し、(中略)中国やインドの学生は理工系の学問を勉強するケースが非常に多い。2008年、インドと中国はそれぞれ、エンジニアリングとコンピュータ科学の分野で大学院修了レベルの学生をアメリカの二倍生み出した。同じ年、アメリカでエンジニアリング分野の修士号を取得した学生の40%、博士号を取得した学生の60%が外国人で、そのほとんどがインド人と中国人だった。」(リンダ・グラットン著「ワーク・シフト」)
韓国でIT関連産業が発展したのは、大学等で理系分野を学ぶ学生に対し、懲役義務を大幅に緩和したためだと云われている。
国家の方針として、何等かのインセンティヴを設けている。
我が国はどうだろうか。先ごろ文部科学省が大学設置認可後の「設置計画履行状況調査」を実施し、惨状を報告した。曰く、半数の大学で教員数が設置基準に満たない、英語の授業でbe動詞の基本的英文法を教えていた等々。 彼我の差があまりにも大きい。
お上に任せておいて良いのだろうか。個々の学習塾が、または業界全体として、大きな志を抱き、未来の絵を描き、それを担う人材を輩出することに努めなければならないのではないか。幕末の「時」のように。

(如己 一)

目次

<<特集>>
    • 今こそ集団授業
    • 2014年度 首都圏中学入試を分析する
    • 下村博文 文科大臣緊急インタビュー

教育改革の推進状況と、これからの展望について

  • 株式公開企業塾 2014年度 第3四半期決算を読む
<<TOP LEADER>>

株式会社成学社 開成教育グループ 代表 太田 明弘 氏

<<シリーズ・著名人に聞く>>

思想家、神戸女学院大学 名誉教授 代表取締役 内田 樹 氏

<<石田 淳のケイゾクはチカラなり>>

ゲスト 小針 一浩 氏 株式会社スターブランド 取締役

<<連載>>
  • NEWS ARCHIVES
  • 学習塾の空間づくり  個別指導学院ヒーローズ府中校(東京都府中市)
  • 疾風の如く〜個別専門学習塾Wi☆Go個別(岐阜県)塾長 高橋 実太郎さん
  • 新米塾長のための部下とサシで行きたいごはん屋さん
  • 会社を建て直すためのリーダー養成塾
  • 挑む私学 大阪偕星学園高等学校
  • 新米塾長のための 学習塾経営基礎講座
  • 論点2014 複雑化する承認欲求
  • 千里の道も一歩から ~編集長備忘録~
  • 日本教育ペンクラブ・リレー寄稿
  • challenge~進化形jukuのカタチ〜市川塾
  • 芸術見聞録
  • 中学生からの子育てスクランブル
  • 井上郁夫の教室指南
  • 林明夫の「21世紀の地球社会」
  • 高嶋哲夫の「塾への応援歌」
  • 未之知也(いまだこれ知らざるなり)
  • 編集後記
  • Book Review
  • 塾長のためのガジェット講座

TOP LEADER Interview|成基コミュニティグループ 代表 佐々木 喜一 氏

「世界中の人々を幸せにする人財輩出機関 日本一」を目指して。メイン_1139

2012年に創業50年という大きな節目を越え、次なる50年へのスタートを切った『成基コミュニティグループ』。代表の佐々木喜一氏は、教育再生実行会議の委員にも選ばれた塾業界のリーダー的存在である。日本のため、ひいては世界のために、教育改革に手腕を振るう佐々木氏に、成基コミュニティグループとしての新たな取り組み、そして、これからの教育の在り方について伺った。

50年目の決意を「成基100年構想」に。

2012年10月の創業50周年記念式典にて発表された『成基100年構想』についてお聞かせください。

「成基コミュニティグループ(SCG)の中で最長の歴史を有する成基学園は1962年5月4日に創立し、2012年で50周年を迎えました。創立50年の企業の生存率というのは、民間の信用調査会社・帝国データバンクの『法人の経年生存率』によれば、わずか0・7%に過ぎません。1万社に換算すると70社しか生存していないことになります。さらに創立100年ともなれば0・03%と、たった3社しか残っていません。
SCGが100周年を迎えるためにはどうしたらいいか。というと、もう日本一を目指していくしかない。それなら、どんな日本一を目指したらいいだろう。それが『成基100年構想』の発端でした。
社員一人ひとりが、どんな分野で日本一を成し遂げたいのかを真剣に考え、結果、3427もの構想が結集。それを私たちのグランドミッションに照らし合わせて精査し、ゆるぎない目標として結晶化させたのが、10年後までに実現する9つの項目、30年後までに実現する2つの項目。そして、50年後の100周年までに『世界中の人々を幸せにする人財輩出機関 日本一』の実現なのです」

──グランドミッションというのは何でしょう。

「ピラミッド型の『価値基準の概念図』を見てください。その最上位に位置づけられる一つがグランドミッションです。SCGは何のために存在しているのか、といった時の依って立つところであり、道に迷ったりした時の戻るべきベース。いわゆる経営理念にあたるものですね。TOP LEADER_03_03

グランドミッションは、創立者佐々木雅一によって記された設立趣意書の理念を受け継ぎ、こう制定しています。『私たちの大いなるミッション(使命)は、地球・国家・地域レベルの様々な課題に対して「人づくり」という観点から問題解決を図ることである。そして、自立した人間として、仕事を通して人に喜びや感動を与えられる能力を高め、感性豊かな本物の人間になるため、自ら鍛え上げることである』と。

いま地球レベルの課題というと、地球温暖化などの環境問題、格差や貧困や紛争といった南北問題があります。これは私たちが直接解決できる問題ではありません。けれども、そういう課題を解決できる人をつくっていくことはできる。単に難関中学校に受かったとか、高い点数を取ったとか、それは子どもたちのゴールではない。世界のため、日本のため、地域のため、より多くの人のためになるような高い志を持って未来へ向かっていけるような子どもたちをサポートすることが私たちのミッションなんですね。
そのミッションに基づいて、顧客となる保護者様とバリューを共有し、『成基100年構想』といったビジョンを描き、それを達成するための方針を打ち立て、行動していく。全体を仕組み化して行動をデザインすることで、着実に向かうべき方向へと進むことができるのです」

社員一人ひとりにも、それぞれの使命がある。

──グランドミッションの他にもミッションはあるのですか。

「もう一つ、パーソナルミッションがあります。自分は何のために生き、何のために働いているのか。社員一人ひとりが深く探求して明確化した個人のミッションですね。
ふだん、私たちは自分の見える範囲、行動する範囲で物事を完結させようとして、地球の裏側で飢餓で苦しんでいる子どもがいようが、戦争をしていようが、自分は関係ないという発想になりがちです。『シンク・グローバル アクト・ローカル』という、グローバルな視点に立って身近なことから行動しようと考えた時、自分らしく命を燃やせるものは何なのか。それをワークショップを通して設定していきます。
パーソナルミッションができると、今までには到底得られなかったブレークスルー、言い換えると『奇跡』を生むことができる。逆に、ミッションが明確になることで、できていないことも明確になってブレークダウン、つまり落ち込んだりすることもある。それでもワークショップを終えたほとんどの社員は、すっきりしたと言ってくれるんですよ。
他人から、こうしなさいと言われてやったことは責任をとらなくなるけれど、自分の深いところから出てきたものに基づいて行動すれば、そうはなりません。何のために仕事をするのかというと、自分のミッションを達成するため。仕事は自分のミッションを達成するためのツールなんです。時には、SCGでは達成できないミッションになることもありますが、それはオッケーです。そのミッションに従って会社を辞めることになったとしても、『卒業』として温かく見送りたいと思います」規範意識の確立へ。大切なのは「7S」と「4J」。

──政府の教育再生実行会議に参加されて、どんな実感をお持ちですか。

「安倍首相と下村文科大臣が強力なリーダーシップを発揮し、いま政府は『教育再生』を急ピッチで進めようとしています。その最も重要なキーワードとして掲げられているのは『グローバル人材』、そして『世界に誇れる学力の育成と規範意識の確立』です。
2009年に(財)日本青少年研究所がまとめた『中学生・高校生の生活と意識報告書』の中に、とても興味深い調査結果があります。『自分はダメな人間だと思いますか?』という質問には、日本の中学生は56%、高校生にいたっては65・8%と、アメリカ・中国・韓国にくらべかなり高い割合で、ダメだと思っているのです。また、世界の中学生を対象としたOECD等の調査によると、日本・アメリカ・中国・韓国・EUの中学生に『親や先生を尊敬していますか?』と質問したところ、アメリカ・中国・韓国・EUでは80%以上が『尊敬している』と答えたのに対して、日本の中学生はわずか20・7%にとどまっています。成基の生徒に同様の調査をおこなったところ、アメリカ・中国・韓国・EUの中学生より高い88・2%でした。日本の教育が抱える問題の根源は、この低い規範意識にあるのだと思います」

──規範意識を確立するために取り組まれていることはありますか。

「規範意識は一朝一夕に確立するものではありません。SCGには創立以来、塾に入る前には門標会釈、授業がはじまる前には合掌・黙想といった作法を通して頑張る気持ちや、勉強ができる環境や家族への感謝の気持ちを心に刻んできました。『成基の7S』と呼ぶ、整理・整頓・清掃・清潔・仕組み・しつらえ・躾の徹底もその一環です。
さらに、『自分はダメな人間なんかじゃない』という自己肯定感、『自分は尊ばれるに値する』という自尊心、『これだけのことをやった』という自負心、『やればできる』という自信。この『4J』を人格の基として、日々の授業の中での小さな成功体験を通じてしっかり形成しています。成基は、まさにお子さまの『成功基地』なのです」

未来の日本代表を育む「アップ・ジャパン・プロジェクト」。

──グローバル人財の育成、これからの教育についての改革や取り組みをお聞かせください。

「今の子どもたちには志がない。先生自身に志がないから、子どもたちが持つわけがないのですが、『志教育』こそ一番大事なことだと私は思います。志は夢とは違います。例えば、〝フェラーリに乗りたい〞というのは夢であって、志ではありません。ベクトルが自分のために向かうのではなく、世のため人のためになったときにはじめて志になるのです。それをイメージ化したものが、2020年をターゲットにした『アップ・ジャパン・プロジェクト』です。『君は日本の代表なんだ。』をキャッチコピーに、自分は何の分野で日本代表を目指すのか、志のフラッグを掲げようという発想です。何も英会話ができることだけがグローバル人財じゃない。日本の伝統文化やサブカルチャーを伝えることも、あいさつがしっかりできることもグローバル人財には必要な要素。それぞれに異なる分野で突き抜けていく、子どもたち一人ひとりが主役なのです」

──民間教育と公教育との連携という部分についてはどうお考えですか。

「日本のためになるということは、究極は世界のためになることだから、公教育では動ききれない部分はサポートしていこうと思っています。そのコアとなるのが語学。国は小学5、6年生の英語授業を週3回に増やすと言っていますが、週3回の授業ではネイティブな語学力は到底身につかないでしょうし、しかもそれは2020年からの話。公教育では北海道から沖縄までレベルを押し並べなくてはいけませんから、まずは教師の育成のために7年間の猶予があるわけですね。今年の小6年生から大学入試はTOEFL等になるというのに、7年後からのスタートでは受験に備えられません。そういう時こそ、私たちの出番。そこに新しい私教育のビジネスがあります」

月刊私塾界2014年2月号掲載