NASA予算大幅削減案、科学ミッションに深刻な影響 ゴダード閉鎖の可能性も

 アメリカ政府が2026年度予算案の草案を各省庁に送付し、NASAの次年度予算が大幅に削減される可能性が浮上した。米メディアの報道によると、NASAの総予算は20%減額され、科学プログラムの予算は半減する見通し。宇宙望遠鏡や金星探査計画の中止、さらにゴダード宇宙飛行センターの閉鎖まで検討されており、各方面から深刻な懸念の声が相次いでいる。

 草案によれば、天文物理学や太陽物理学、地球科学、惑星科学の各予算は軒並み30〜50%の減額となり、2026年以降に打ち上げ予定の赤外線宇宙望遠鏡「ナンシー・グレース・ローマン」や、40年ぶりとなる金星探査機「ダヴィンチ」は中止が避けられない情勢。また、火星探査ローバー「パーサヴィアランス」が採取したサンプルを地球に持ち帰る「MSR計画」も停止の可能性が高まっている。
 さらに、今回の草案にはNASAの主要拠点であるゴダード宇宙飛行センターの閉鎖案も盛り込まれた。天文・惑星・地球観測の中核拠点で、約1万人の職員と契約者を抱える同センターの閉鎖は、NASAの科学ミッションに壊滅的な影響を及ぼすとみられる。
 予算案には、イーロン・マスク氏も「懸念すべき事態」とコメント。バイデン政権下でNASA長官を務めたビル・ネルソン氏も、「NASAの科学を蹂躙すれば、有人探査にも影響する」と批判した。
 この予算案は今後、米議会での審議に入るが、歳出委員会のクリス・ヴァン・ホーレン上院議員は「科学ミッションは国家安全保障と技術革新に直結する。ゴダードの機能を削ぐのは危険だ」と述べ、徹底抗戦の構えを示した。
 一方、4月9日に上院商務委員会で承認公聴会が行われた次期NASA長官候補のジャレッド・アイザックマン氏は、民間宇宙飛行士の経験を持ち、有人探査の推進を公約に掲げている。しかし、その翌日に示された今回の草案は、同氏の方針と大きく矛盾する内容であり、今後のNASA運営の行方に注目が集まる。

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