小中部門と東進部門が連携し次なる高みへ

小中学生を集団指導する早稲田スクールは、熊本県内のトップ高校に多くの生徒を送り出している。この塾を運営する株式会社早稲田スクール(熊本県熊本市)は、他に個別指導ブランドも展開しているほか、東進衛星予備校にも加盟している。高校部担当 執行役員の竹下臣治氏と、東進衛星予備校 熊本水前寺校 校長の蓑田朋和氏に、現在抱えている課題を中心に取材した。

小中部門と高校部門の間にあった見えない壁

まずは早稲田スクールの歩みをお聞かせください。
竹下 1971年に創業した早稲田スクールは、地道に校舎を増やし2003年には個別指導部の「早稲田アイ・スタディ」を立ち上げ、学研ホールディングスとも資本提携し、近年は積極的に教室を展開しています。また、2007年には東進に加盟しています。
 課題に感じているのは、小中部門と高校部門(現東進衛星予備校)との間にあるセクショナリズムです。本来であれば小中部門の社員が携わるべきだったと感じますが、高校部門を立ち上げるにあたって新たに人財を採用したんです。そのため以前はかなり距離感がありました。

どのような状態だったのでしょうか?
竹下 お互い別会社かのような感覚があったため遠慮していましたし、個人間の交流もほとんどなかったと思います。
 しかし段々と東進の素晴らしさに気づき、高校部門において小中部門のよさを残しながらも東進のよさを打ち出そうとしてきました。
 そうした経緯があるなか、私は3年前に現職に着任。AIに負けないスピードで進化している東進コンテンツをよりよく運営できるよう、試行錯誤しているところです。
 目指しているのは、社員たちが臆することなく行動でき、発言ができる。そんな環境作りです。

具体的にはどのような働きかけをされているのでしょうか。
竹下 メールでのやり取りを増やしたほか、高校部門の職員が小中部門で説明会をおこなうなど、双方が交わるきっかけを作っています。
 そしてまさに今日、1回目の新高1生向け研修を小中部門でおこなったところです。距離感のある時期が長かったので一気に解消とはいきませんが、少しずつ前進していかなくてはと感じています。

本音でぶつかるバーチャル校の継続率が高い

蓑田朋和氏

高校部門への継続状況はいかがでしょうか。
蓑田 以前は継続率が高い時期もありましたが、今は正直あまりうまくいっていません。少子化やコロナ禍、物価高といった社会情勢のせいにしても仕方ありませんので、巻き返さなくてはと考えています。
 しかしながら高校部門の職員に任せず、自分で継続面談をする小中部門の先生もいて、そうした先生がいる校舎は継続率が高いです。やはり小中部門と高校部門は密に連携すべきだと感じます。
 また、2年前には小中部門において早稲田スクールバーチャル校を開校したのですが、そこも継続率が高いですね。

早稲田スクールの高校部門は東進衛星予備校を運営している

バーチャル校のどんなところがよいと感じられますか?
竹下 とにかく校舎長の熱意がすごいんです。バーチャルだと生徒との関係作りが大変ではないかと感じていましたが、熱意があればそれも関係ないことが証明されました。
 またその校舎長は、我々高校部門にも本音をぶつけてくるんですよね。遠慮をしていては何も生まれない、と実感しました。
 月1回の全体会議でこの好事例を共有しようとするのですが、属人的な部分が大きく、まだ「何をすべきか」が明確に捉え切れていません。そこをしっかり言語化し、再現性を高めていきます。

東進の志教育を活かし切る「志部門」を設立

高校部門の東進衛星予備校では「志作文」に力を入れていると思いますが、御社での取り組みについてお聞かせください。
蓑田 志作文は興味のある校舎から進めてもらいました。最初は数校が走り出した形でしたが、他の校舎もそれに追随しようと動き出しています。
 そして今年からは、全高1生が必須で取り組むものとしました。志作文の提出率は年々高まっていますので、来年は8割以上の生徒が提出できるよう進めています。
 それから熊本県の高校生は成績上位校であっても、大学を意識する時期が遅いんです。志作文は受験に本腰を入れるべきいいタイミングでおこなわれるので助かっていて、生徒たちには「難しく考えず、まずはありのままを表現しよう」と伝えています。
 それゆえネガティブな内容になる生徒もいますが、これを書くことによって考えが改まり、受験への意識が着実に高まっていると感じます。

高校部門で定期的に実施しているチームミーティングは、「非認知能力」の育成にも役立っている

効果を実感されているわけですね。
竹下 ええ。東進のコンテンツは、生徒の非認知能力にもしっかり働きかけてくれるので有り難いですね。「志部門」を新たに立ち上げ、そうしたコンテンツを十分活用できるよう取り組んでいます。

今後の目標をお聞かせください。
竹下「高校別対応の個別指導コース」を東進本部は新たに開講しました。学校の勉強に不安を抱えている中位下位層の生徒への切り札になると思いますし、これまでとは違った角度から生徒を導けるのは大きいと感じていますので、今後、積極的に提案していくつもりです。
 また最近は、担任助手をしっかり指導する必要性も感じてきました。担任助手に任せなければならないことはたくさんあり、それができればかなり運営側の底上げが図れます。思い切ってそこに踏み込めるよう、周りをリードしてまいります。

■株式会社早稲田スクール https://www.wasedaschool.com
■東進衛星予備校 https://www.toshin.com/es/

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