久留米高専 学生の研究が画像認識精度の向上に寄与

 独立行政法人国立高等専門学校機構 久留米工業高等専門学校(福岡・久留米市、松村 晶 校長)の機械・電気システム工学専攻科2年生の與田悟史さんは、指導教員である黒木祥光教授(久留米高専制御情報工学科)のもと、AIが画像分析を行うための学習手法の一つである「畳み込みニューラルネットワーク(CNN: Convolutional Neural Network)」の研究をしている。與田さんの行った研究により、CNNを用いた画像認識精度の向上が実現した。與田さんの研究成果は、国際会議ICIIBMS(International Conference on Intelligent Informatics and BioMedical Sciences)2022において、『Student Best Paper Award』を受賞している。

ポイント
・画像認識において、畳み込みニューラルネットワーク(CNN: Convolutional Neural Network)の畳み込みフィルタの初期値に、畳み込みスパース表現における辞書フィルタを用いる手法を提案した。
・提案した辞書フィルタはCNNと異なり、少ない学習用画像でも作成することができるため、特に学習画像枚数が少ない場合でも高い分類精度を達成した。

背景
 画像認識において、CNNは他の手法を圧倒した画像認識精度を誇っていることが知られている。CNNのこの高い画像認識能力は、画像の特徴を持つフィルタによって構成される畳み込み層を導入することにより実現している。CNNがうまく学習を行うためには、適切な学習パラメータの初期値を設定する必要があり、Xavierの初期値やHeの初期値を用いたパラメータの初期化手法が提案されている。
 今回の研究では、黒木教授の研究室で研究されている畳み込みスパース表現と呼ばれる画像の近似表現手法を用いてCNNのパラメータの初期値を設定した。提案手法では、畳み込みスパース表現における辞書フィルタがCNNの畳み込みフィルタと同様に画像の特徴を持つことに着目し、畳み込みスパース表現の辞書フィルタをCNNの畳み込みフィルタの初期値に設定しCNNの精度向上を目指した。

畳み込みスパース表現
 畳み込みスパース表現は、画像の特徴を表す辞書フィルタと辞書フィルタの分布を表す係数マップ との畳み込み和によって画像を近似表現する手法。

実験
 実験では、2層の畳み込み層を持つ小さなCNNを用いてデータセットCIFAR-10のクラス分類を行い、畳み込みフィルタの初期化方法の違いによる分類精度を比較した。
 実験の結果、CNNの学習枚数が少ない場合にL1誤差項を用いた畳み込み辞書学習によって初期値の計算を行ったCNNの方が、Xavierの初期値やL2誤差項を用いた畳み込み辞書学習によって初期化を行ったCNNよりも高い分類精度を達成した。

今後の展望
 今回の実験で用いたデータセットの画像サイズは32×32画素と小さいため、より大きな画素数を持つ画像データセットでの検証を行い提案手法の実用性を確認することを予定している。また、CNNの学習中の畳み込みフィルタの変化について調査を行い、提案手法による初期化の影響も明らかにしたいと考えている。この研究の成果が画像認識を始めとするAIの発展に寄与することを期待している。

久留米工業高等専門学校について
 本校は5学科からなる本科と2専攻からなる専攻科を備えた工業高等専門学校で、からくり儀右衛門と呼ばれた発明家・田中久重翁の出身地及びゴム産業の発祥の地である久留米に昭和39年に創設された。自立の精神と創造性に富み、広い視野と豊かな心を兼ね備えた、社会に貢献できる技術者の育成を教育理念とし、久留米工業高等専門学校の教育・研究の発展に寄与するとともに、地域社会における技術開発及び技術教育に資することに努めている。

【学校概要】
久留米工業高等専門学校
久留米工業高等専門学校
学校名:独立行政法人国立高等専門学校機構 久留米工業高等専門学校
所在地:福岡県久留米市小森野1丁目1番1号
校長名:松村 晶
設立:昭和39年
URL:https://www.kurume-nct.ac.jp/
事業内容:高等専門学校・高等教育機関

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