株式会社トモノカイ(東京・渋谷区、徳岡 臣紀 代表取締役社長)は、文部科学省初等中等教育局視学官として新学習指導要領作成に携わった國學院大人間開発学部初等教育学科の田村学教授と共同で、今年度から高等学校で必修となった「総合的な探究の時間(以下、探究)」の指導について全国の高等学校の教員360人を対象に実態調査を行った。探究を教えていて感じる課題は、約5割の教員が「生徒からの質問に答えるために情報を調べる時間や、大学の研究室などに問い合わせるネットワークがない」と答えた。
■調査概要
調査対象:全国の高等学校で「探究」を指導している教員
調査期間:2022年7月14日~7月28日
調査方法:インターネットリサーチ
有効回答数:360サンプル(うち「探究」の指導経験があるのは301人。トモノカイによる「探究」のサポートを受けている教員は調査対象外)
■調査結果① 約5割「生徒の質問に答える時間や人脈ない」
「探究」の指導経験がある301人のうち、「探究」を教えていて感じる課題で最も多かったのは「生徒からの質問に答えるために情報を調べる時間がない」で23%だった。次いで22%が「生徒からの質問に答えるために大学の研究室などに問い合わせるネットワークがない」と答えた。「生徒からの質問に答える方法がわからない」も5%いて、教員だけで生徒の質問に答えることに負担を感じる教員が多いことが明らかになった。
■調査結果② 4割超が「教員同士で指導法を検討」
「探究」を教えていて感じた課題をどのように解決しようとしているかという質問には、43%が「教員同士で指導法を検討」と最も多く回答が集まった。「指導法をレクチャーするセミナーに参加」は22%いたものの、「塾や指導の専門機関を学校に招き勉強」は4%のみで、専門家などに指導のアドバイスを求めながらも学校の中でのサポートは限られていることが明らかになった。
■調査結果③ 最も希望するのは「学生による学習サポート」
学校の通常の授業以外で生徒の探究学習をサポートするとしたら、どのようなことに取り組みたいかという質問には、「放課後の教室で学生が生徒の学習をサポートする」が最も多い34%で、「放課後の教室で教員が生徒に補習指導を行う」(31%)を上回った。「探究の副教材を生徒に配布する」も15%で、教員が指導する以外の方法を希望する教員が多いことがわかった。
今回の調査経て、國學院大學の田村教授は、「多くの高等学校が「総合的な探究の時間」に対して、前向きに取り組もうとしていることが分かりました。具体的な校内研修などは組織内で解決しようとしていることも明らかになりました。これからは、学校外の組織の知見を活用することも必要ではないかと考えます。また、多様な生徒の課題にどのように対応するかについても、多くの教師が不安を感じている姿がデータから垣間見えてきます。探究においては、生徒の学びを支え、ともに伴走する姿勢が大切であるとともに、そうした生徒のニーズに対応するためにもさまざまな外部リソースを活用することを検討していくことが求められます。確かな探究の実現のためには、学校だけで対応しようとするのではなく、地域社会や企業、大学などとの連携を積極的に行い、「社会に開かれた教育課程」を実現しようとする姿勢が重要になるのではないかと思います。」とコメントした。
トモノカイ採点アウトソーシング事業統括マネージャー吉田裕典氏は「生徒が設定する「探究」のテーマはAI、数学、法律、医学など新しい技術と専門知識を必要とするものが多く、3年ほど前から、先生方の時間不足や専門的な質問への対応の難しさなどから探究活動へのサポートに関するお問い合わせをいただくようになりました。授業外の時間で1人の先生が個々にテーマの異なる20人の生徒にフィードバックをするなど、非常に大変な状況にあるとうかがい、今回の調査結果によりあらためてそのような悩みが多くの学校に広がっているということがわかりました。弊社では先生方の抱える課題にあわせて、専門性が高い学生の力を集めて生徒の悩みや疑問に答えることで探究活動に伴走しています。民間企業が学校の外からサポートすることも一つの選択肢にしていただくことで、先生方の負担軽減に少しでも貢献できればと考えています。」とコメントを残した。