大阪大学産業科学研究所(大阪・吹田市、産業科学研究所)と、凸版印刷株式会社(東京・文京区、麿 秀晴 代表取締役社長)は、「リアルタイムAI技術」の社会実装に向けた共同研究を、2022年5月より開始する。
「リアルタイムAI技術」とは、産業科学研究所 産業科学AIセンターの櫻井研究室(櫻井 保志 教授)が研究を進めている独自のAIアルゴリズム。工場等の生産現場におけるIoT機器や、ヘルスケア機器のセンサから収集されるような、連続的な時系列データをリアルタイムで解析し、複数のAIモデルを切り替えながらその先の状況を予測・推論することが可能なAI。「リアルタイムAI技術」の活用によって、環境変化や外的要因を受けやすい個体差/個人差がある事象に対して、高速で高い精度の予測が可能となる。
産業科学研究所と凸版印刷は、この「リアルタイムAI技術」の社会実装を推進するべく、その第一弾として、凸版印刷の生産現場における設備コンディション予測や、リアルタイムに取得された生体データから明らかにできる個人の健康や心理状態予測サービスの開発に向けた技術検証を行う。
■ 共同研究の内容
・設備コンディションの予測及び予知保全の技術適用方法の確立
製造設備から取得される稼働データの時系列傾向から、設備コンディションを分析/予測するAIモデルの開発を推進する。このAIモデルが設備コンディションの異常(設備の不具合)に起因する稼働率低下や良品率低下の予兆を事前に検知することで、今まで解決できなかった生産プロセスの改善に寄与することを目指す。
まずは、凸版印刷の生産工程におけるリアルタイムAIの最適化アルゴリズムを共同開発し、工場内に導入。将来的にはスマートファクトリー関連事業への導入を目指す。
・生体データを活用したパーソナライズされたサービス開発への技術適用の評価・検証
日々の行動データやウェアラブル端末から取得される生体データを用いて、個人の健康状態や心理状態の推移を予測することにより、利用者の健康管理や顧客接点強化を支援するAIモデルの開発を目指す。例えば、健康管理支援の1つとして介護施設などで入居者の睡眠傾向の推移の確認と覚醒タイミングの事前検知ができると、より利用者個人のタイミングに合わせた適切なケアが実現する。
■「リアルタイムAI技術」の特徴
・時系列ビッグデータの解析の自動化が可能
ビッグデータ解析はデータ量の多さから、人力によるデータパターンの抽出や分類など、前処理の負荷が高いとされている。一方「リアルタイムAI技術」は、それらの作業を自動化できるため、細かいチューニングなく、重要な情報の抽出が可能となる。これを、生産設備の状態把握に適応した場合、事前把握が困難な設備故障や不良要因の時系列特徴を素早く発見することが可能となる。
・外的要因・個体差に適応力のあるモデルの実現が可能
「リアルタイムAI技術」は、入力データに応じて予測モデルを切り替え、未知のデータパターンが入力された場合、新たなモデル作成をリアルタイムで行う事が可能。これにより、設備稼働データや生体データを始めとした外的要因を受けやすく、偏差が大きくなりやすいデータが入力された場合も、その状態に合わせて、継続して精度を保ちながら将来予測をすることができる。
■ 今後の目標
凸版印刷と大阪大学産業科学研究所は、スマートファクトリーやヘルスケア領域での「リアルタイムAI技術」の研究開発を進め、2024年度の事業/サービス化を目指す。そして「リアルタイムAI技術」の社会実装によって、豊かで安全/安心な社会の実現を目指していく。