一般社団法人日本教育学会(広田照幸会長)は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休校長期化を受けて政府内で議論が始まった始業や入学時期の9月移行案について時間をかけた丁寧な社会的論議が必要であると考え、政府に対して拙速な導入を決定しないよう求める」との声明を発表した。3000人近い研究者らでつくる日本教育学会は学習の遅れなどの懸念があるなか「9月入学導入は状況をさらに混乱させ、悪化させかねない」と強調し、2021年4月の小学校入学を同年9月に変更した場合、世界でも異例の7歳5カ月で義務教育が始まるケースがあると指摘。移行期の5カ月分の学費が私立大学だけでも、1兆円近くにのぼるなどの問題点も挙げた。
4月末に東京都の小池百合子知事や大阪府の吉村洋文知事らが「グローバルスタンダード」などを理由に導入を強く主張し、安倍晋三首相も「前広に検討」と発言に対し同学会の広田会長は「はっきり言って、教育の制度も実態もあまりご存じない方がメリットだけを注目して議論されている」と厳しく批判した。また「9月入学か何もしないかの二者択一ではなく、いまできることを提案したい」として、オンラインによる家庭学習のサポートや学習指導要領を今年度は特例としてスリム化するなどの案を挙げた。政府は4月末、関係省庁の幹部による勉強会を立ち上げ、必要な法改正などの課題整理を進めている。