2016年4月開校の学校法人角川ドワンゴ学園N高等学校(以下N高)が「開校から3年間の実績発表会」を開催した。開校から4年目を迎える2019年4月には生徒数は9000名を超える見込み。短期間で躍進を遂げたN高の3年間の歩みを、ドワンゴ代表取締役社長の夏野剛氏と、N高の校長である奥平博一氏が報告した。
高い卒業率
入学者数に関して奥平校長は「一般的な学校として、3年で7000名を超える生徒が在籍しているのは、いままでに歴史的にもない数字で、一つの目標は達成できた」と振り返る。
2016年入学から3年経ち無事卒業を迎えた一期生割合は74%であったが、通信制高校において一般的に「卒業率」として使われる「3年生まで進学」した中での一期生の卒業率は96.7%に達し、これは通信制高校のなかでは極めて高いという。
続いて、卒業生の進路決定率は81.8%と、一般的な通信制高校の61.5%と比べてもきわめて高い数値を出していることも明らかにした。
大学合格実績
大学合格の実績も出始めている。2018年度は慶應義塾大学に8人、早稲田大学に2人、上智大学に1人、明治大学に3人、九州大学に1人、筑波大学に1人など、難関大学に合格した生徒が出てきたほか、海外大のキリロム工科大学や英国のスタッフォードシャー大学にそれぞれ1人ずつ合格した。N高は在学中に灘高校や慶応義塾湘南藤沢高等部と共同でスタンフォード大学やオックスフォード大学に短期留学するプログラムも提供しており、N高校高進学後の海外大進学も現実的であることが伺える。
職業体験
N高は「多種多様な社会への接続」を目的に、多様な職業体験を用意している、特に「地方滞在型の職業体験」を重要視しており、全国の自治体/産業と連携した多様なプログラムがある。このようなショートステイ型の体験学習だけでなく、職業体験の事前事後で明らかになった生徒の課題に対して、専門家と協力してスキルトレーニングを提供している。参加者の満足度は99%を誇っており、本プログラムを通して多くのN高生が職業体験をしている。
多様な進路
ほかにも、起業家養成プログラムである「N高起業部」を作り、部の活動予算年間最大1000万円を用意している。スタートアップ経営者やベンチャーキャピタル(VC)のキャピタリストによる講義なども提供し、起業家が輩出されることを目指している。
母体がIT企業なだけあり、プログラミング教育も充実している。多数の企業にすでにインターンを送り出しており、送り出されたN高生に対し企業側は「実装力が大学生以上」「問題解決力が社会人並み」などの高い評価をし、そのまま就職をオファーするケースも出てきていると言う。しかし、インターンで企業実務に携わった結果、「基礎教養の重要さ」に気づき、企業からオファーされつつも大学進学を決意する生徒も出てきているという。
プログラミング以外にも、クリエイター必須のAdobeがN高生は利用できるほか、企業実務の現場で必須のg suiteやslackで校内のプロジェクトが運営されているなど、会社での業務環境と同等のIT環境で学習を進めている。
学校生活の充実
このような進路だけではなく、N高は「生徒コミュニティ施策」と呼ぶ、生徒にとって学校生活そのものが充実するような取り組みにも力を入れている。インターネットを活用し、eスポーツ部や美術部などネット上でも活動できる部活が盛んだ。
N高に対する保護者満足度は、開校した2016年の71.4%から、2017年度81.1%、2018年度は83%と上がり続けており、夏野社長は、「通信制高校に通うことに対しての、親御さんの理解を得ることがチャレンジ。今後もさらに保護者満足度を高めていきたい」と総括する。テクノロジーの活用に関しても「もっとできることがある。教育のインフラとしてITを浸透させていく」(夏野社長)「数十万人の生徒を相手にしても、テクノロジーを活用して教育的な質を担保できる施策を続けて打っていきたい」(奥平校長)と意気込んでいる。夏野社長は最後に「N高だけではなくほかの通信制高校の注目度も高まっている。社会の流れとして、様々な機会を増やしていくことが求められている。我々だけではなく、日本全体として選択肢が増えていくことが重要」と、通信制高校業界で日本の教育に新たな風を吹き込んでいく決意を示した。