「326万人の貧困家庭の子ども達を、貧困から抜け出させるために、今、学習塾ができること」をテーマにした講演会が7月10日、都内で開催された。主催したのは日本メディア教育株式会社の代表取締役であり、一般社団法人「貧困家庭の子どもの学習・進学を支援する全国運動(以下「キャメル」)」の代表理事でもある大塚意生(いさく)氏だ。eラーニングの専門家である大塚氏は現在、学習塾・高校(209校)、大学(3校)、企業などを対象にeラーニングを配信。約10万人の有料会員を抱えている。
自らも貧困家庭で育った大塚氏は、貧しい家庭の子供を何とか支援したいと思うようになったという。昨今では無料塾などが広がりをみせているが、開催場所を公にすることが難しいため子供を集めるのに苦労するほか、来なくなってしまう子がいるなど、課題もある。そこで同氏は、eラーニングを使って子供たちを支援しようと考えた。
構想では、年収200万円前後の全国の貧困家庭の子供たちに、プロの映像授業を直接配信するほか、希望する自治体にも映像授業を提供していく。塾にとってみれば競合になるという懸念もあるかもしれないが、「私たちが対象とする家庭は、塾がターゲットとする層とは完全に異なる」と同氏は強調する。
会の途中では、大塚氏とタッグを組み、日商簿記3級の授業を全国209の高校に無料配信している、小島一富士氏が登壇。公認会計士であり、一般社団法人 日本商業教育振興会の代表理事でもある小島氏の支援により、貧困に苦しむ奄美大島の子供が最年少で公認会計士に合格するなど、目覚ましい成果を達成。「eラーニングには無限の可能性がある。塾は昼間空いているので、収入源になるようなコンテンツを全国的に提供したい」と小島氏は訴えた。
大塚氏も家庭や自治体だけでなく、塾にも無料で映像授業を提供したい考えで、今年の9月頃から中学生用のコンテンツ制作に着手する計画だ。まずは英語と数学の「解説映像」「ウェブチェックテスト」「1人ずつの学習管理システム」を構築していく。
気になるのがキャメルの収入源だが、厚労省や文科省、地方自治体から補助金を得たいとしているほか、一般からの寄付、あるいはテキスト販売による利益などを想定している。
今後は携帯会社や通信会社にも協力を要請したり、有名人(スポーツ選手、財界人)に若い頃の苦労話や子供たちへのメッセージも提供してもらう考えだ。そしてゆくゆくは「キャメル奨学金」の設立や、世界中の国々にもコンテンツを配信するといった、スケールの大きなプランを掲げている。