危機感背景に、多くの関係者が出席
去る4月21日(木)、株式会社エデュケーショナルネットワーク(以下、EN社)は、大阪にて『2016年度中学入試情報セミナー』を開催。私立中の入試広報担当者や塾などを対象に、同社が集積した直近の関西圏中学入試データから市場傾向を総括しようというものだ。参加者は学校関係者が73校・126名、民間教育事業者は30社・57名。受験生となる12歳人口の減少などを背景にしてか、参加者の多さがその危機感を物語っている。
しかし、中学受験事情に詳しいEN社の藤川享氏が同セミナーで語ったところによると、暗いニュースばかりではないと言う。ここ2年、中学入試の機運は盛り上がりを見せており、受験生数そのものはほぼ横ばいだが、受験「率」は2014年度の8.7%を底に、9.0%(15年度)、9.2%(16年度)と上昇傾向にあるという。
生徒募集成否の二極化、女子校は苦戦
また、この流れに乗り受験生(入学者)を大きく伸ばした学校もある一方で、大きく定員割れする学校もあるなど二極化が激しいのも近年の傾向、と藤川氏。人気校の共通項として挙げられるのは以下の五点だ。①京阪神大への進学がはっきりイメージできる「難関進学校」。②クラブとの両立も可能で、国公立大への進学も狙える「ソフトに見える進学校」。③関関同立クラスの附属校 ④併設大学をセーフティネットとし、それ以上の大学進学を期待させる「半附属校」。⑤学校改革などで今後が期待できそうな「新進校」。共通キーワードとして見えてくるのはやはり六年後の進路保証であり、中学受験をする保護者層にとって最大の関心であると言えそうだ。
逆に苦戦しているのは、そうした「出口」に対する保証の弱い偏差値五四以下の学校と、進路特性の出しにくい女子校だ。私立の学費を考えたとき、いわゆる「普通の」女子中学校を私立受験するくらいなら、難度的に多少無理をしてでも先述の附属系共学校を狙わせ、ダメなら地元の公立中から上位の公立校を目指そうという傾向が強いと見られる。こうした女子校不遇は当面続きそうで、全国的な共学化が加速する中、関西圏でも次年度からさらに二校の女子校が共学化に踏み切る。参加したある女子校の教諭は「かつては女子校ならではの教育理念や数値化できない強みに魅力を感じてくれる保護者も多くいたが、近年はやはり出口保証がないと厳しい」と複雑な表情を見せた。いずれにせよ、次代のニーズと学校の個性や理念をいかに共存させ、不易と流行の学校改革を進めるかが私立校生き残りのカギとなるだろう。
次回の同セミナーは9月15日(木)開催。17年度の入試要項を総覧する予定だ。