関西外国語大学(大阪府枚方市)国際共生学部の5人がまとめた報告書の一部が、国連人権理事会でブータンの人権状況を審査する際の資料となるサマリーに採用された。サマリーには、欧米などのNGOや人権問題研究機関などから提出された報告書から多数引用されているが、日本から提出して引用されたのは国際共生学部の報告書のみになっている。
国連人権理事会への報告書をまとめたのは、福田和生准教授と、福田准教授が主宰するインフォーマルゼミ(研究会)に所属する兼本千陽さん▽モリタ・ケイレブ・マサシさん▽狩野桜子さん▽小宮路男さん。11月に国連人権理事会で審査するブータンの人権状況をめぐり、サマリー作成のための資料を報告書にまとめた。
国連人権理事会は2006年、従来の人権委員会に替えて新設された。人権委員会では、全加盟国の人権状況を定期的に審査する制度がなかったことや、一定の国の事案に議論が集中したこと、先進国が途上国の人権状況を批評する場になってしまったことなど、必ずしも公平公正な観点から人権審査が行われていないとの反省があった。
国連人権理事会では、国連の全加盟国193カ国の人権状況を約5年のサイクルで審査するUniversal Periodic Review (UPR、普遍的定期審査)を実施している。UPRは国連加盟国すべての人権状況を、政治的・社会経済的ステータスに関わらず、加盟国同士で定期的に審査する画期的なメカニズムで、設立当初から期待が集まっている。
UPRは、審査の対象となる国が作成した報告書(national report)のほか、国際機関の報告や国連の公用文書を編集した文書(UN compilation report)、そして国連高等弁務官事務所がNGOや人権専門家、人権団体などから集めた情報を集約したサマリー(stakeholder compilation report)に基づいて行われる。
3つ目のstakeholder compilation reportについては、大学などの高等教育機関も国連人権高等弁務官事務所に報告書を提出することができる。福田准教授のインフォーマルゼミのチームは、UNICEF(国連児童基金)や世界銀行、UNODC(国連薬物犯罪事務所)、ブータンの憲法や刑法などを参考に分析して、児童の人権状況をメインに全7ページの報告書をまとめた。
提出を受けた国連人権高等弁務官がまとめた「Summary of stakeholder’s submissions on Bhutan」では、計7カ所でインフォーマルゼミチームが作成した報告書の内容が引用された。いずれも児童の人権をテーマにしたもの。「人身売買を含むあらゆる奴隷制の廃止」「教育を受ける権利」「ほとんど報告されていない児童虐待」「体罰の容認」「障害児童の保護と問題」などの項目で引用された。
国連人権理事会のサマリーには、「Kansai Gaidai University」と明記されている。指導に当たった福田准教授は「ゼミにおける人権に関する取り組みはまだまだ始まったばかりです」としたうえで「正式な国連の書類内で〝Kansai Gaidai University〟と明記され、関西外大及び外大生が国連人権理事会のUPR審査プロセスに関わることができました。現時点では世界レベルで見て、大学機関のUPR審査への貢献度が大きいとは言えません。(今回、サマリーに採用されたことは)さまざまな観点から大きな意味を持つものではないでしょうか」と話している。