関西大学、福井大学、名城大学、アークエッジ・スペースが電源温度管理の新手法など複数エネルギー技術を搭載した超小型衛星「DENDEN-01」を共同開発

 関西大学化学生命工学部の山縣雅紀 准教授、福井大学産学官連携本部の青柳賢英 特命准教授、名城大学理工学部の宮田喜久子 准教授、株式会社アークエッジ・スペースらの共同研究グループで開発する10cm×10cm×10cm(1Uサイズ)の超小型人工衛星「DENDEN-01」が完成し、2024年6月4日に国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構筑波宇宙センター(JAXA)への引き渡しが完了した。

 超小型人工衛星は電力や質量、サイズの制限があり、また熱容量も小さいため、宇宙空間の急激な温度変化の影響を受けやすく、安定した電力供給に課題があった。本衛星では、温度が変化すると物質の結晶状態が変化し、この過程で熱を吸収または放出することができる「固-固相転移型潜熱蓄熱材(SSPCM)」を活用した電源温度安定化装置はじめ、今後の超小型衛星開発に貢献する複数のエネルギー技術および高負荷ミッションの軌道上実証を行う。

 人工衛星の中でも100 kg未満の衛星を超小型衛星と呼んでおり、その中でも1辺10 cmの立方体を基本構造 として規格化されたキューブサット(CubeSat)は、容易に入手できるキット化されたコンポーネントの普及によ って迅速な開発が可能であり、コスト効率が高いことから、その打ち上げ数は年々増加している。従来の教育 や技術実証目的の開発のみならず、近年では民間での開発も活発に行われており、リモートセンシングや衛星通信など宇宙ビジネスを担う重要な役割を果たすようになっている。キューブサットはその多様な用途と利便性から広く普及しつつあるが、さらなる技術的進化が求められている。特に、商業利用の拡大に伴い、ミッションの複雑化と要求性能の向上が不可欠である一方 で、同時にキューブサットの高機能化と信頼性の向上が求められており、そのためにも衛星に搭載する各機器に対して、高品質で安定した電力の供給技術が必要となる。 しかし、キューブサットは電力や質量、サイズの制限があり、熱容量も小さいため、宇宙空間の急激な温度変化の影響を受けやすいという特徴がある。地球周回軌道で運用されているキューブサットの電源温度を解析したところ、比較的低温に推移する傾向にあり、-15℃に達するケースも確認できている。このような低温環境 では、電源性能が急激に低下するため、衛星における様々なミッションの制限や、衛星自体の運用に重大なリスクが生じる。 この課題に対して、関西大学と名城大学は2020年からキューブサット搭載電源の温度管理手法を共同で検討し、固-固相転移型潜熱蓄熱材 (SSPCM) を活用することを検討してきた。

 この成果を実際のキューブサットで実証することを目指し、福井大学および株式会社アークエッジ・スペース を加え、今後の超小型衛星の進化を支える革新的な電力供給・エネルギー技術を実現すべく、DENDEN-01 プロ ジェクト(プロジェクトマネージャー: 関西大学化学生命工学部 山縣雅紀 准教授)を進めてきた。2021 年度末には国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)およびNPO法人大学宇宙工学コンソーシアム(UNISEC)により公募された「学術利用及び人材育成を目的とした『きぼう』からの超小型衛星放出機会の提供プログラム(J CUBE)」の 2021 年度打ち上げ枠(国内先進ミッション枠)に採択され、2022 年度より衛星開発がスタートした。

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