国立文化財機構 文化財活用センターとキヤノン株式会社は、「文化財の高精細複製品の制作と活用に関する共同研究プロジェクト」のもと、皇居三の丸尚蔵館が収蔵する国宝「唐獅子図屏風」の高精細複製品を制作した。完成した作品は、東京国立博物館の体験型展示スペース「日本美術のとびら」にて、2024年6月30日まで一般公開する。
文化財活用センターとキヤノンは、より多くの人に文化財に親しむ機会と、より深い文化体験を提供することを目的に、2018年10月より共同研究に取り組んでいる。これまでに15作品の高精細複製品を制作し、ガラスケース無しで作品を間近で細部まで鑑賞できる展示や、教育機関向けのアウトリーチプログラム、映像と組み合わせた体験型展示など、オリジナルの文化財では実現させることができない鑑賞体験を提供してきた。
今回、複製品を制作した国宝「唐獅子図屏風」は、高さ2m20cmを超える非常に大きな屏風で、右隻は、織田信長や豊臣秀吉らに仕えた桃山画壇の巨匠・狩野永徳の代表作。岩間を闊歩する二頭の堂々たる獅子の姿が力強い筆法で描かれている。左隻は、永徳のひ孫にあたり、江戸時代前期に徳川家に仕えた絵師・狩野常信が、右隻にあわせて制作したもの。現在は、右隻と左隻を合わせた一双屏風として伝えられている。
複製品の制作にあたっては、特定非営利活動法人 京都文化協会とキヤノンが進める「綴プロジェクト」の技術を活用しています。キヤノンの入力、画像処理、出力に至るイメージング技術と、京都伝統工芸の匠(たくみ)の技との融合により、作品の大きさだけではなく、絵師の筆遣い、岩絵具の鮮やかな色、金箔や金具に至るまで、オリジナルの文化財を限りなく忠実に再現している。
完成した高精細複製品は、東京国立博物館 本館特別3室の体験型展示スペース「日本美術のとびら」にて、2024年6月30日まで一般公開している。ガラスケースに遮られずに間近でご覧いただくことで、作品の迫力、力強い筆遣い、唐獅子の勇壮さなどを存分に体感することができる。