推し進めてきたICT化が、非常事態で力を発揮

 新型コロナは塾や学校といった教育機関にも大打撃を与えているが、こうした状況へ柔軟に対応している学校もある。大阪府富田林市に校舎を構える私立 初芝富田林中学校高等学校は、平井正朗氏が2018年に校長に着任して以降、「超進学校化宣言」の下、ツールの一つとしてICT化とグローバル化を推進してきた。

 例えば中1〜高2までの数学で導入しているのが、AI型タブレット教材「Qubena(キュビナ)」だ。キュビナを活用すれば自宅学習を学校でチェックできるほか、誤答問題の類題を自動的に出題してくれたり、自動採点もしてくれる。それによって、教師の勤務時間や労力の削減が可能だ。また、最短1分から学べる映像授業「スタディサプリ」や「スタディサプリEnglish」も全校生徒に導入し、カリキュラム・マネジメントの一助としている。ICT化を進めた背景には、働き方改革への意識もあった。長時間労働になりがちな教師の負担を軽くしようと、ICT教材で効率化を図ることとした。

 そうしてICT化を推し進めている最中、折しもコロナショックが起こった。全国的に休校が余儀なくされているが、初芝富田林はICTを駆使して遠隔指導をおこなっている。例えば、タブレットにZOOM(ズーム)というビデオ会議アプリをダウンロードさせ、担任が毎朝朝礼を実施。子供たちにクラスの連帯感を感じさせながら、各生徒の健康状態のチェックや学習の進捗状況管理もできている。

「本校の生徒は意欲が高く、制度設計をうまくすればまだまだ伸びると着任初年度に感じました。そこでICTを導入して“学びの選択”を与えながら、アダプティブ・ラーニング(個別最適学習)を進めているのです。到達度が上がるほど、自己調整学習ができており、PDCAサイクルを回せています。コロナショックという国難に直面している今、学校も厳しい局面に立たされていますが、ある程度ICTの素地があったことが、よい結果を生んでいるのだと思います」と平井校長は話す。

私立 初芝富田林中学校高等学校 平井正朗校長

 こうした取り組みは生徒募集にも好影響を及ぼしていて、2020年の中学入試では受験者数が過去最多の500名を突破。14年ぶりに定員を満たしただけでなく、最上位は東大・京大・医学部医学科を目標とする「S特進探求コース」が1クラス増え、4クラスとなった。高校も今年度は1クラス増の8クラスとなったほか、最上位が東大・京大・医学部医学科を目標とする「Ⅲ類」が開学来初の2クラスとなっている。 進学校としての立ち位置を強固にすべく、ICT化とグローバル化をさらに強めていくとしている平井校長。今後は同校教師の授業動画も配信する予定で、教師の動画は基礎基本用、スタディサプリは大学受験対策用と、使用目的を明確にすみ分ける考えだ。コロナが終息したあとも、ICT化は同校の教育の質を高めていくだろう。

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