ベネッセ教育総合研究所は、2017年3月に、3歳から18歳(高校3年生)までの子どもを持つ母親16,170名を対象に、習い事や部活動などの学校外教育活動の実態や費用について調査を実施した。過去2009年、2013年にも行っており、8年間の変化をとらえることもできたと発表した。
1.重い教育費の負担感。保護者の約7割が「お金がかかり過ぎ」と回答
●教育費に対する意識は2013年から大きく変わっておらず、引き続き負担感は重い。
・「教育にお金がかかり過ぎると思う」 ………………………………… 67.2%→1.0ポイント増
・「教育費の無駄はできるだけなくす努力をしている」 ……………… 62.3%→1.5ポイント増
※数値は「とてもそう」+「まあそう」の合計。増減は2013年から2017年の変化。
2.学校外教育活動費※がもっとも多いのは、中3生の25,900円
●学校外教育活動費は幼児から中学生にかけて増え、中3生の25,900円がピークになる。
・幼児(3~6歳) …… 6,500円 ・小学生…………… 15,300円
・中学生…………… 22,200円 ・高校生…………… 15,900円
※学校外教育活動費=スポーツ活動、芸術活動、教室学習活動、家庭学習活動の費用の合計。
※幼児、小学生、中学生、高校生の金額は、各学校段階別の平均の値。
3. 子ども1人あたりの費用は、8年前と比べて月額で2,200円の減少
●校外教育活動費は2009年と比較し減少。減少幅は、学年が上がるほど大きい傾向がみられる。
・幼児(3~6歳) …… 700円減少 ・小学生…………… 2,600円減少
・中学生…………… 2,900円減少 ・高校生…………… 3,400円減少
※増減は2009年から2017年の変化。
4.保護者は「スポーツや芸術よりも勉強」を重視する意識を強めている。
●勉強を重視する意識を強め、教育全般に対する不安が高まっている。
・「運動やスポーツをするよりももっと勉強をしてほしい」……………… 39.4%→12.6ポイント増
・「音楽や芸術の活動をするよりももっと勉強をしてほしい」 ………… 44.4%→12.7ポイント増
・「子どもの将来を考えると習い事や塾に通わせないと不安である」… 60.8%→9.1ポイント増
・「子どもにはできるだけ高い学歴を身につけさせたい」 …………… 64.4%→4.9ポイント増
※数値は「とてもそう」+「まあそう」の合計。増減は2009年から2017年の変化。
5.世帯年収や居住する自治体の人口規模による活動費の格差は、変わらずに存在。
●子どもの生育環境によって1人あたりの活動費は異なり、その状況は2009年と変わっていない。
・世帯年収別の学校外教育活動費…「400万円未満」8,000円 < 「800万円以上」25,000円→3.1倍
・人口規模別の学校外教育活動費…「5万人未満」9,900円 < 「指定都市・特別区」17,500円→1.8倍
■調査結果からみえてきたこと
【ポイント】
①学校外の教育活動にかける費用は減少傾向にあるが、負担が重い実態は変わらない。
②活動費のピークは中3生。中高生をもつ世帯では収入減少もあって、負担が重くなっている。
③「勉強」を重視する意識が強まっている。とくに、「スポーツや芸術活動よりももっと勉強してほしい」が増加。
④世帯収入や居住地域の人口規模によって、活動費に格差がみられる。
●教育費の負担感は、依然重いまま
今回(2017年)の調査では、約7割の保護者が「教育にお金がかかりすぎると思う」を肯定するなど、前回(2013年)に引き続き、教育費の負担感が重い実態が明らかになった。また、約6割が「教育費の無駄をできるだけなくすようにしている」と回答。実際に、学校外教育活動に支出する費用の合計(月額)は、8年間で平均2,200円ほど減少している。中高生をもつ世帯での収入の伸び悩みもあって学年が上がるほど減額幅が大きく、習い事の数を減らしたり、より費用の安い活動に変えるなど、工夫をしている様子がうかがえる。
それでも、3歳で月額3.200円の学校外教育活動費用は、中3生では25,900円に達する。その比率は、世帯の収入の5%ほど。きょうだいがいる家庭では、さらに負担が大きくなります。また、授業料や進学にあたっての入学金などの経費を考えると、家計にはさらに大きな負担があると考えられる。
●「勉強」重視傾向が強まる。背景には子どもの将来に対する不安も。
このように重い費用を負担する背景には、保護者の教育に対する意識がある。「子どもの将来を考えると習い事や塾に通わせないと不安」や「子どもにはできるだけ高い学歴を」といった項目を肯定する割合は6割で、前回から増加。とくに目を引くのは、「スポーツや芸術活動よりももっと勉強してほしい」という「勉強重視」の意識の強まり。その影響もあって、スポーツ活動や芸術活動の「活動率(過去1年間で定期的に活動した比率)」は、低下している。
先に公示された新しい学習指導要領では、変化が激しい社会を生き抜くために、多様な資質・能力を育成する必要が謳われています。子ども時代のスポーツや芸術の経験は、教科の学習だけでは補えないさまざまな力を育むと考えられます。子どもの経験に偏りが生まれないような配慮が必要とされる。
●家庭や地域による教育費の格差も懸念
さらに、世帯年収や居住する自治体の人口規模によって、学校外の教育活動にかける費用が異なっている実態もあります。調査では、世帯年収が「400万円未満」の世帯と「800万円以上」の世帯で、子ども1人にかける活動費が3倍以上も差があることが明らかになった。また、人口規模が「5万人未満」の自治体に住む子どもと「指定都市・特別区」の自治体に住む子どもでも1.8倍程度の差があり、地域格差も存在します。こうした生育環境の違いによる教育経験の差をどう埋めるかは、大人世代の責任として考えていかなければならない課題といえる。
【調査概要】
この調査結果の詳細は、ベネッセ教育総合研究所のWEBサイトから「学校外教育活動に関する調査」の調査票・集計表をダウンロードができる。http://berd.benesse.jp/shotouchutou