〝日本一の先生〟めざし 足利で全国模擬授業大会

栃木県の開倫塾が主催する「全国模擬授業大会」が5月25日(日)、日本最古の学校である「足利学校」のあった足利市の足利工業大学附属高等学校の教室とホールを借り切っておこなわれた。前日の24日には、茂木敏充経済産業大臣も駆けつけプレイベントが開催されるなど。この週末は、足利の街が塾関係者で賑わった。

開会式で式辞を述べる開倫塾の林明夫代表

開倫塾の林明夫代表

全国模擬授業大会は「チョーク1本で教育改革 を」を合い言葉に、2006年から毎年この時期に開催され、今年で9回目を迎える。今年は、全国から60を超える学習塾・学校ならびに企業・団体が参加した。開倫塾の林明夫代表は開会式で「授業を充実させることにより、各教育機関の社会的使命(ミッション)を果たすことを目的としています」と宣言し、日頃から学習塾に通う生徒たちに、授業を通して学ぶことの楽しさや、生きることの目的を自覚してもらうことを実践している先生たちに向けてエールを送った。

大会には、参加した各塾から選りすぐりの48人の先生たち。午前中は、国語、数学、英語、理科、社会の各教科ごとに13のブロックに分かれて予選をおこなった。模擬授業の審査は、授業導入部分の15分間を実際に生徒が居ると想定して先生が授業をおこない、授業を受けている生徒をいかに惹きつけ、その後に続く授業をモチベーションを高い状態で受け続けられるかということを1授業につき3名の審査員が、授業目標の立て方、板書の工夫、本題に入る前のツカミや間の取り方といった話法に関する項目でポイントを付け、合計点が高いほど良い授業とされる。

午後に入ると、各教科ごとに2〜4名の予選通過者が、改めて各教科1人の本戦出場者を決めるために模擬授業をおこなった。その後、参加者全員が講堂に集められ本戦がおこなわれた。本戦に進んだのは、国語の舩木政子先生(創学舎)、英語の石田朋彦先生(トーゼミ)、社会科の田中潤先生(洛西進学教室)、理科の高田晋輔先生(野田塾)、数学の岡部正行先生(開倫塾)の5人だ。(※名前は本選の授業順)

左から舟木政子先生(創学舎)、石田朋彦先生(トーゼミ)、社会科の田中潤先生(洛西進学教室)

左から舩木政子先生(創学舎)、石田朋彦先生(トーゼミ)、社会科の田中潤先生(洛西進学教室)

5人とも観ている者を惹きつける、普段であれば授業を受けている生徒たちが、楽しみながら「もっと知りたい!」と学びのエンジンが起動するような見事な授業を披露してくれた。審査員からも「年々レベルが上がっている」といわれるほど素晴らしい授業の中から雌雄決するのは困難を極めたとみられるが、見事最優秀賞に輝いたのは、理科で「感覚器官」の授業をした野田塾の高田先生だった。

左から理科の高田晋輔先生(野田塾)、高田先生が「三半規管」を説明するためにくるくる回って表現、数学の岡部正行先生(開倫塾)

左から理科の高田晋輔先生(野田塾)、高田先生が「三半規管」を説明するためにくるくる回って表現、数学の岡部正行先生(開倫塾)

審査委員長を務めた野田塾の小川英範塾長

審査委員長を務めた野田塾の小川英範塾長

審査委員長を務めた野田塾の小川英範塾長は最終審査には加わらなかったものの、39人の審査員が高田先生を高く評価した点は、お笑い芸人としても通用しそ うな「言動一致」と「体を張った」点だろう。「三半規管」を理解させるために、自らその場で25回まわって、目を回してフラフラになりながらも「なぜそうなるのかほかのことに置き換えるとこう」ということをとても分かりやすく伝えたことだろう。

表彰式を終えると、審査委員長の小川塾長から本戦に進んだ5人の先生一人ひとりに、素晴らしかった点や、今後こういった点を伸ばすと生徒たちにとってさらに良い授業ができる、といった講評が伝えられたほか「授業は引き算。10伝えたいことがあっても3つに絞って伝える」といった、小川塾長自身が培ってきた良い授業のエッセンスを伝授してくれた。

全国模擬授業大会は、次回10月26日(日)に名古屋で開催される。そして栃木での開催は来年で10回目を迎える。ほかの塾がどんな方針で講師を育成しているのか、また生徒のために何を大事に授業を設計しているのか、ということがつぶさに見て取れる模擬授業は、講師として出場をしなくても、観覧するだけで十分に価値のある大会と言えるだろう。

表彰式では今回初めておこなわれたAE(オール・イングリッシュ)授業に挑戦した3名に「チャレンジ賞」が授与された

表彰式では今回初めておこなわれたAE(オール・イングリッシュ)授業に挑戦した3名に「チャレンジ賞」が授与された

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