昨今注目を集める校塾連携だが、さる11月7日(木)、近畿大学附属高等学校(東大阪市)で行われた一例は極めて珍しいパターンと言えよう。
生徒数3,000名を超える大規模校であり、近年は、系列の近畿大学に固執することなく、京大・阪大・神大などへの進学に力を入れている同校だが、そんな中、進路講演会の講師として招かれたのは、カリスマ予備校講師でも、大手塾の社長でもない。町の小さな個人塾の塾長だ。
須原英数教室(大阪府八尾市・創塾1979年)は、塾長・須原秀和氏が夫婦だけで運営する「ザ・個人塾」とでも言うべき小さな手作りの塾だが、いわゆる「進学塾」にありがちな「詰め込み型・やらされる勉強」と一線を画し、「学校の授業」「自分の勉強」と「徹底した基礎の反復」のみで、地元有名進学校や旧帝大に次々合格者を輩出。
その独自メソッドと「受験塾ではない。学校教育・家庭教育・社会教育に次ぐ『塾教育』を実践したい」という理念に近大附属高が賛同し、講演会講師として三顧の礼で迎えた形だ。同校の岡崎忠秀校長は「須原先生は素晴らしい理念で教育を実践している方。塾も学校も関係ない。生徒たちのためになるなら、ぜひその力を借りたい」と語る。
講演で須原氏は、「あれもこれもと参考書・問題集に手を出さず、『この一冊』を何度も反復すれば十分」「中期・長期の計画を立てる」など、具体的な勉強法に言及するとともに、何度も「キミたちはできる」という熱いメッセージを発し続け、参加した生徒、保護者たちも真摯に耳を傾けていた。
また「一言お礼を言いたい」と、講演後の須原氏をずっと待っていたのは、元・塾生だという男子生徒。久々の恩師の姿と言葉に感極まったらしく、帰路につこうとする須原氏に駆け寄って号泣。「先生、僕は頑張ります!」と誓いを立てる姿に、須原氏、居合わせた同校校長や教員らが揃って胸を熱くする一幕も。
こういった心の触れ合いも、校塾連携が目指すべき一つの姿かもしれない。