今年度から文科省がスーパーグローバルハイスクールとして、全国56校を指定してグローバルリーダーの養成に乗り出している。今回、NPO法人学校支援協議会が主催するシンポジウムでは、その施策に対し、中学・高校ではどうすればよいかを真っ向から考える場として法政大学市ヶ谷キャンパスにて6月1日に公開された。当日は中学生・高校生を始め、多くの教育関係者が一同に集まり、これからのグローバルリーダーをどう育てるかを考える場となった。「グローバルリーダーに育つ中学・高校の学びとは〜未来の難問に挑む子どもたちのために〜」と題した2部構成。
第1部は開成中学・高等学校(東京都荒川区)の柳沢幸雄校長による反転授業の模擬授業。基礎的な内容を自宅で予習し、教室では発展的な内容を学ぶ「反転授業」。同氏は自宅で各自、「水俣病」について自習をしてきた中学生、高校生を相手に、公害病を想定した討論を通じて、率先して発言の重要性などをやさしく説いていく。今回は架空の公害病が起きた場合のケーススタディ。当事者ならどのように行動するかを生徒たちに判断し続けた。
柳澤校長から「指されたら3秒以内に発言する」「ほかの人と同じ意見は言わない」などのルールも設定され、生徒たちは迷いながらも舌戦を展開していった。柳沢校長は「常に発言を準備することで、生徒の脳が活性化され、知識の定着につながる。一方、教師には瞬間的な議論の流れに食い込んでいく技術が求められる」と話していた。グローバル社会に立ち向って行く中で、自ら発言していくことの重要性を反転授業を通じ、体感させていった。
休憩を挟み、第2部では公開シンポジウム。NHK解説委員の早川信夫氏のコーディネートの下、各教育期間でグローバルリーダーの育成に取り組んでいる有識者によるパネルディスカッションが行われた。鷗友学園女子中学高等学校の吉野校長から、11年前から取り組んでいるオールイングリッシュで行っている英語授業の改革についての発表。横浜市サイエンスフロンティア高等学校の栗原峰夫校長からは、先端科学技術の知識を活用した「サイエンスリテラシー」を柱としたグローバル人材教育についての事例発表。武蔵学園(東京都)の有馬朗人学園長からは、英語で科学を学ぶ「ムサシ・テンプルREDプログラム」の事例紹介があった。
法政大学の学長の田中優子氏からはグローバル人材育成の施策の一環として取り組み始めた「国際ボランティアプログラム」、「国際インターンシッププログラム」の事例紹介が為された。「国際ボランティアプログラム」では夏休みの約2週間、法政大学の学生をアジアやその地域に派遣。そこで、環境問題、貧困問題を真正面から体験させ、国際社会に貢献しようという意識を植え付けさせる。田中氏は「知識を得るばかりではなく、現地で具体的な解決法を身に付けることが大学としての命題になる。学生たちが自主的になるグローバル体験の場を設けることが重要」と話す。
会の最後に開成高校の柳沢校長は、「グローバル人材とは地球上にいる70億人以上の人が相互に理解可能なコミュニケーションを取る事ができる人」と説き、「それには論理力が必要である」と語る。丁々発止、意見が飛び交い、最後まで飽きさせないシンポジウムとなった。