本州への接近が危ぶまれた台風27号が東の海上に逸れ、透き通るような青空に恵まれた10月27日(日)。野田塾(愛知県津島市、小川英範塾長)が主催する「全国模擬授業大会 in 名古屋」が開催された。大会会場の名古屋中学校・高等学校(名古屋市東区)には、全国から集まった腕に自信のある115人の講師が出場し、日頃から磨きをかけてきた授業力を競い合った。
3回目を迎える秋の名古屋大会
「全国模擬授業大会」は例年5月に、開倫塾(栃木県足利市、林明夫塾長)の主催で行われているが、2011年からは野田塾の主催で10月にも大会が行われるようになり、この秋の大会は今年で3回目を迎えた。
開会にあたって、野田塾の小川英範塾長は「この大会を通して塾の先生のステータスを上げ、技量を上げるために、私が40年かかって学んできたことを、次の世代を担う皆さんには10年で身につけてもらいたい。そしてその次の世代の皆さんには5年で身につけてもらいたい」とこの大会に懸ける思いを語った。また「塾教育が日本の教育にますます貢献していくことを確信している。これからの塾講師としての人生をしっかりとサポートしていきたい」と大会の主催者として挨拶した。
今回の大会は、英語、数学(算数)、国語、理科、社会、ルーキー(新人)の6部門に分かれて、15分間の模擬授業を繰り広げながらトーナメントを勝ち上がっていった。模擬授業では、話や板書の内容が生徒にとって「わかりやすい」「ためになる」「おもしろい」といったポイントが塾業界で長年にわたる経験を積んだ26名の審査員が、授業で最も重要とされる新しい単元の導入の授業を見て、生徒のやる気をより引き出せる講師を評価した。
白熱する予選、19人が決勝に
予選は19の教室に分かれて行われ、各教室5人〜8人の中から1人決勝戦に進出できる講師を決める。その後、各部門毎の決勝戦が行われ、最終的にルーキー部門を除く5部門からグランドチャンピオン決定戦進出者が決まった。
決定戦に進出したのは、国語部門が野田塾(愛知県)の柴田よし美先生、数学部門が創学舎(千葉県)の森清志先生、社会部門が創学舎(同)の矢上有一先生、理科部門がトーゼミ(埼玉県)の並木貴弘先生、英語部門がうすい学園(群馬県)の沓澤愛先生の5名で、同校のチャペルで出場者と見学者を合わせ500名の観客が見守るなか最終決定戦が行われた。
決定戦を前に、ここまで勝ち残ったポイントについて聞かれた並木先生は「教室全体を巻き込んでやることをポイントに置いた」と話し、国語部門の柴田先生は「この舞台に立つことが夢だったので、できればもうひとつ上のステージに立ちたい」と意気込みを述べた。5人の授業はいずれも甲乙付け難く、審査員も時折講師から振られる質問に応えながら授業に参加し、真剣な表情で審査を行った。
5人の授業が終わり最終審査を行っている間に、ルーキー部門で最優秀賞を獲得した鹿島塾の能村晋平先生が世界史の「啓蒙思想」の授業を披露した。能村先生は「新人離れした」という前評判通り、堂々とした授業を見せてくれた。
グランドチャンピオンは僅差の闘い
最終的な審査結果は、3位が1043ポイントを獲得した沓澤先生、2位が1086ポイントで並木先生、そして1108ポイントを獲得し、見事グランドチャンピオンに輝いたのは柴田先生。持ち前の明るさで、その場にまるで小学校4年生の生徒が居るような雰囲気で、国語辞典の引き方の授業を行った。
この後、各部門毎の優秀賞とグランドチャンピオンの表彰式が行われ、大会の総評を述べた愛知県私塾協同組合の山田真司理事長は「非常に素晴らしい授業をたくさん魅せていただいた。柴田先生の授業は4年生の国語の授業ということで、ひと言ひと言分かりやすい言葉で、丁寧で分かりやすい授業を展開していただき感動した」と話した。また、19歳のころから30年近く講師を続ける山田氏自らの経験を語り「今は生徒のために日本の将来のために頑張っていく塾が残っていく時代だと思っています。私たちはこれから将来の日本を背負って立つ子どもたちに、夢や希望を与える素晴らしい授業を提供していかなければならない」とエールを贈った。
模擬授業大会の前日には、野田塾の津島本部校でプレイベントが行われた。このプレイベントは、過去の大会でグランプリを獲得した野田塾の山田涼二先生、濱口将成先生、むぎ進学教室の岡田純彰先生、創学舎の村田寛之先生がそれぞれ、自身の授業に対する考え方や構築の仕方をレクチャーし、エキシビションとして模擬授業を披露し200名の講師が聞き入った。
今大会に9名の講師が出場したトーゼミの大森登希義代表は、大会を終えて「この大会に参加することで組織の方向性が定まり、一丸となって力を合わせることができた」と全国模擬授業大会に参加することの意義を話してくれた。